―原田さんを祝え!―



私がこの時代にトリップしてきて早数ヶ月。

新選組のみんなにも暮らしにもなれてきた。

せっかくだからみんなの為に何かしたい!
そう思って考えた結果が…


「これだぁ!!!」


広間にいるのは近藤さんを筆頭に幹部の皆さま。みんなきょとんとしてる。土方さん以外。


「やだなぁ、トッシー。眉間に皺すごいよ。」

「誰がトッシーだ。なんだいきなり紙切れ突き出して。」

「くじだよ。くーじ。」

「何のくじですか?」

「よくぞ聞いてくれた千鶴ちゃん!今日の夜左之さんの誕生日パーティをしようと思います!!!!!」


「「「誕生日…ぱーてぃ?」」」

「それは一体なんだ?左之に何か関係があるのか?」

斎藤さんが首を傾げて聞いてくる。


「お誕生日をお祝いするんだよ!未来ではみんなすることだよ。おいしいもの食べて、何か贈り物をして、その人を喜ばせてあげるんだよ!」


左之さんが巡察にでかけているすきに話し合っておかないとね!

「へぇ。それはとても楽しそうだけど。どこにその予算があるのかなぁ?」

「その通りだ。うちはただでさえ苦しい生活してんだ。誕生日をいちいち祝ってられるか。」

「いや、いいじゃないか。せっかくだし、みんなで原田君をお祝いしよう。」

「近藤さんは優しいなぁ。なら僕も手伝います。」


なんだあのスマイル。
相変わらずの猫かぶり。もう猫耳つけちゃおうかな。


「でもさー実際金ないぜ?どうすんの?」

「そうだなぁ。給金でるまでまだ時間あるしなぁ。」

「それは心配なっしんぐ。」


そう言って私はみんなの前にドンっとお金をつきだした。
目を丸くするのは千鶴ちゃんだけじゃない。


「どうしたんですか!?これ。」

「お前…何して手に入れた?」

「怖いって土方さん!変なことしてないよ。地道にこっそりためてたの!」


ま、未来の道具やお菓子をうまいこと使ってお金と交換してきたんだけどね。企業秘密ってやつだよ。


「左之さんだけじゃないよ。みんなの誕生日の時もお祝いしたいし。私だって考えてるんだよ!」

「そうだったのか。」


近藤さんは涙目になってる。
どんだけ感動しやすいんですか。
そんなところが素敵ですけど。

「ま、ということで、つべこべいわずこの紙に書かれている好きな線選んで名前書いて!」

いわゆる、あみだくじです。


「じゃ俺これ!」

「俺はこれだ!」


みんなが次々と名前を書いていく。

「おい、これに何の意味があるんだ?」

「役割分担だよ。ほら、食事係とか買い出しとか。」

「では俺は…これだ。」

「おいおい近藤さん、あんたまで参加するのか?」

「もちろん土方さんもですよ。」


そう言って沖田さんが豊玉と名前を書く。


「総司…てめぇ。」

「わー!ケンカしないで!はい、じゃ発表しまーす!あ。その前に。」


私は立ちあがってみんなを見まわした。
にっこり笑顔で続ける。

「たとえどんな担当になっても、絶対に拒否しないこと。やりぬくこと。いい?」

「場合によるだろ。」

「はい、武士に二言はないということで!」

「聞いてんのか!?人の話!」

土方さんのつっこみは華麗にスル―したところで…。


「まずはご飯作るのはー千鶴ちゃん!あと源さん!」

「いつの間に源さんまで・・。」

「巡察に出る前に書いてもらってたの。」


次々とあみだくじをしていく。

「えーと、買い出しと準備を沖田さんと平助君!」

「了解。お酒買いにいけばいいのかな?」

「準備ってなんだ?」

「部屋を少しお掃除しなきゃ。そういう準備だよ。よろしくねー。」

「俺は何をやればいいのかな?」

「近藤さん重要ですよ!左之さんの話相手です!」

「話相手?」

「準備を気付かれちゃいけないんで。パーティが始まるまで左之さんを外に連れ出しておいてください。」

「わかった!」


自分の仕事が重要と言われたのが嬉しかったのか近藤さんが御日様みたいな笑顔で頷いてくれた。


「おい、俺はなんだ?」

「俺も呼ばれていないが・・。」

「俺もだぜー。」


土方さん、斎藤さん、永倉さんに言われて思わず笑みがこぼれてしまう。

「くくっ…。三人はもっと重要なんですよ。」

「「「?」」」

「綺麗なお姉さんもいないとねぇ。」

「まさか芸妓連れてこいって言うんじゃねぇだろうな?」

「それは難しい話だ。」

「近所の姉ちゃんでさえ連れてこられないぜ?」

「まかせといてください!簡単ですから!では三人以外準備にとりかかってー!」

そう言うとみんな広間を出て行った。


「さ、私達もいきましょう。」


満面の笑顔を送ったはずなのに、目の前の三人は三人とも苦い顔をしていた。
これから起こることがまるでわかっているかのように。




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