原田さんの場合(現パロ)



月に一度の面倒なあれ。

私も二日目とかかなりしんどいし、こなくていいって何度も思ってきたけれど。

最近、そうでもない。

「おい、大丈夫か?」

ゴロンと体を声のする方へ転がすと黄金色の瞳が心配そうにこちらを見ていた。


「うん。薬飲んだから大丈夫だよ。」


心配性の恋人は毎月必ずくるのがわかっていても毎月同じように私を気遣ってくれる。



「何か飲むか?カフェインは控えたほうがいいんだったか?あーホットミルクとか…。」

「ふふっ。そんなに気にしなくても大丈夫だよ。ミルクティがいいなぁ。」

「そっか。わかった。待ってろよ。」


私のおでこを優しく撫で、そこに小さく口づけをすると口角を少しあげ、満足そうに微笑みながらキッチンのほうへ向かって行った。



そう。
生理の時はいつにも増して左之が優しくて、お姫様扱いされるもんだから。

生理も悪くないかもーなんて思ってしまうのだ。


同棲を初めて一年ぐらい。
お互い働いているから家事は分担だけど、この一週間は左之がほとんどこなしてくれる。
申し訳ないから少しは手伝おうとするんだけど、最初の三日間ぐらいはいいから寝てろって言われちゃうんだよね。


本当に優しい恋人に恵まれて私は幸せ者だと思う。

「ほら、できたぞー。」


リビングのほうから声がしたのでベッドからのろのろ起き上がって向かった。


ソファに座ると甘い香りが鼻腔をくすぐる。



「砂糖少し多めにしたけど大丈夫か?」

「うん!甘いのが飲みたかったから。」

「あんまり摂りすぎると太るぞ。」


ぽんっと人のお腹に手を置いてニヤニヤしている。
う…確かに最近少し太ったけど。



「ひどっ。生理んときはなんかほしくなるんだもん。」

「ははっ。ま、少しぐらい太ったって可愛いけどな。」


本当にそう思ってくれてるんだろうなって顔で笑うから。
嬉しくて顔がゆるんじゃうのが恥ずかしくてミルクティに口をつけた。


「ありがとう。左之。」

「ん?」

「毎月毎月。ううん、毎日。左之は優しいから。ついつい甘えちゃうんだけど。でも、私も何かしてあげたいって思ってるから。左之も私に甘えてね。」


直接言うのが恥ずかしくて、ミルクティを見つめながらしか言えなかったけど。


ちゃんと言わなきゃって思ってたんだ。

言葉にしなきゃ伝わらないこともあると思ったから。


すると横から手が伸びてきた。
私の大好きなたくましい腕。
そっと包まれるように抱きしめられる。


「どうしたの?」

「俺は男だからな。あんまり甘えるとかできねぇんだけどよ。だけど、お前がいてくれるだけでがんばろうって思えるから。…ありがとうな。」

「左之。」

「ほら、飲んだらもう少し寝てろ。今日一番きつい日だろ。」

「うん。ありがとう。」



そう言うと左之は私の手からコップをとり、テーブルに置くとそのまま私を抱き上げる。


「ちょ!一人で歩けるから!」

「俺がこうしたいんだよ。」


そのままお姫様だっこでベッドまで連れて行かれふわりと下ろされる。


「やっぱり生理ってしんどいか?」


ベッドに寝かせた私を見下ろして左之が呟いた。
何をいまさらな質問。


「へ?あ、まぁ。ないほうが楽だよね。」

「そうか。じゃあしばらくなくすか。」

「え?いや、なくならないけど。」



そう言うと左之がニヤリと何かを思いついた顔をする。
その表情から思うにあんまりいいことではなさそうだけど。


「…十ヶ月ぐらいとまる方法あんだろ。」

「左之、それって。」

「とりあえず来週あたりお前の親に挨拶しにいくか。俺そういう順番は守りたいからな。」

「あのー。」

「ん?」

「それって…。」

「俺はお前とずっと一緒にいたい。一生支えてやりたいって思う。だから…。」



ごくりと唾をのんだ。
まっすぐに見つめてくる綺麗な目。
まるで魔法にかかったように動けない。



「俺と結婚してくれないか?」

「…うん。」



きっかけが生理って変な話だけど。
きっとこの人は毎日私を思ってくれるから。


安心してその腕の中にいくことができた。



左之のあたたかさをたっぷり感じていると。


「生理終わったら覚悟しておけよ。俺、子供たくさんほしいから。」

「え?」



意地悪そうな目がこちらを見ていた。



あれ…。



なんか生理より大変なことになる気がする。










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