―お兄ちゃんは心配性 原田編―


私には一つ悩み事がある。


それは。


左之兄が好きなこと。








両親が再婚して、私には兄ができた。


左之兄は優しくて、かっこよくて。


まさに理想のお兄ちゃん。


「おーい。」

「左之兄!?」



校門を出ると左之兄が車を停めて待っていた。
思わず驚いて大きな声を出してしまう。


「どうしたの?」

「迎えに来たんだよ。雨降りそうだったからな。」



確かに空はどんより曇ってるけど。
わざわざ迎えに来てくれるなんて本当に優しい。
左之兄はいつも優しくて。
私の話をたくさん聞いてくれるし、アドバイスもしてくれる。
自慢の…お兄ちゃん。


「ほら、はやく乗れ。」

「うん。」



友達にかっこいいお兄ちゃんだねと言われ、照れつつも少し複雑な気分になりながら。
私は左之兄の車に乗り込んだ。


「大学は??」

「今日は午後休講だったんだよ。」

「そうなんだ。」



運転している横顔は本当にかっこよくて。
表情とか仕草とかにいちいち心が反応する。


「学校楽しかったか?」

「うん。テストあったけど。」

「どうだった?」

「ぼちぼち。」

「お。さすが俺の自慢の妹。」




―妹―



そう。


血は繋がってなくても妹なんだ。


左之兄のまわりには大人っぽい人がたくさんいるだろうし。
私みたいな子供はきっとそんな対象にならない。


兄妹になったから出会えたのに。
兄妹になったからそれ以上なんてない。



でも。



この思いは消えるのかな?消せるのかな?




「…い…おい!」

「え!?」

「どうした?何かあったのか??」



信号待ちで左之兄は心配そうにこっちを見ていた。


「だ、大丈夫!」

「大丈夫って顔してないんだよ。話聞いてやるから。言ってみな。」


言えるわけない。
言ってしまったらもう、一緒にいられない。


言いたいのに言えないことがこんなに苦しいなんて思わなかった。
だめだと思うほど目が熱くなって涙がでてくる。


「どうした!?」



左之兄はさらに慌てて、信号が青になると発進して近くの路肩に車を停めた。
すぐに私の目元に手をあて、涙をぬぐってくれる。


「学校で何かあったのか?」


首をふった。


「じゃあ…。」

「好きになっちゃいけない人を好きになったの。」

「好きになっちゃいけない?」


頷く。


だめだ。


気持ちを消すことはできない。


「左之兄が好き。」


左之兄が瞠目する。


言ってしまった言葉は取り消せない。


これからどうしよう…なんてぼんやりした頭で考えていたら。


「まいったな。」



あぁ、呆れちゃったかな?


「お前に言わせるぐらいなら俺から言いたかった。」

「え?」


シートベルトを外され、引き寄せられた。
あれ?あれ?なんて思っていたら左之兄の腕の中で、目の前に整った綺麗な顔があった。


「こうやって迎えに来るのも、お前に変な男がついてないか気になって仕方がなかったからだ。」

「左之兄?」

「なるべくお前の傍にいたい、お前とたくさん話をしたいって、俺どうかしてるなって思ってたんだが。」



黄金色の目が優しく細まる。



「これからは、左之助って呼んでくれ。」



ふわりとおでこに唇の感触。



「しばらく…親父達には内緒でな。」



ニッと笑う左之兄の顔から目を離せなくて。



帰ったら普通に過ごせる自信が一気になくなる私なのでした。






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