妄想男子6


「昨日夜出かけたらさ!あちこちイルミネーションがすっげえ綺麗だったんだよなあ。」


平助の発言に思わず耳を傾ける。
季節的にそろそろだとは思っていたけれど始まったんだ。
椅子を揺らしながら楽しそうに後ろの一と総司に話しかけていた。


「もうすぐクリスマスだからね、町中浮かれるんじゃない。」

「そうか…もう年末になるのか。時が過ぎるのは早いものだ。」

「ちょっと…一君何歳だよ。クリスマス吹っ飛ばして年末って。」



ほんとだよ、一。おじいちゃんか。
クリスマスよりこたつで年越しを待っている一の方が想像つきやすいけどさ。


「クリスマスといえば。ねえ、二人とも【シカ】って十回言って。」

「何故。」

「しかしかしかしか…。」

「ほら、一君。」

「しかしかしか…。」


これってあれだよね。
私答えわかったんだけど。


「「しか!!!」」

「サンタクロースがのってるのは?」


「ソ…。」
「トナカイ!!!」


一の発言を遮るように平助の声が響く。
それは笑顔で目をキラキラさせて言うものだから横に居て思わず笑いそうになった。


うんうん、平助、100点の答えだよ。



「はい平助君はずれ。一君は多分わかってたみたいだけど。」

「ええ!?トナカイだろ!?」

「どこの国にトナカイに乗ってプレゼントを配りまわるサンタがいるのだ。サンタが乗っているのはソリだ。」

「…きったねえ!」

「平助君は期待を裏切らないね。」


本当だよ。
裏切らないよね、可愛いなあ。
平助がサンタだったらトナカイに跨ってプレゼント配ってそうだけどね。



「サンタってさ、普段何してるんかな?」

平助が目をキラキラさせながらそんなことを言った。
サンタさんが本当にいたらってこと?
うーん。
クリスマス以外仕事ないよね。正直。
クリスマス前はプレゼントを集めたりで大変だろうけれど。


「ニートだよ。」


おいいいい!!沖田!自粛しろお!
世の中の子供達にサンタの職業ニートって言う大人がいていいわけないじゃない!



「総司…そりゃねえよ。」

「だってクリスマス以外何もすることないじゃない。」

「普段は農作業などをするのではないか?自給自足しないと生計をたてることができない。」

「うーん…なんかそれはそれでリアルだけど夢がねえよ。」


どいつもこいつも。
もっと夢のある妄…想像ができないものかしら。


「そもそもサンタって一人?なわけないよね。」

「さすがに一人では世界中を回りきれないだろう。」

「え!?でもサンタが乗ってるソリってめちゃめちゃ速いんじゃないの!?なんかそんな話聞いたことあるんだけど。」

「平助、トナカイの走る速度は時速八十キロだ。世界を回れる速さではない。」

「いや、一君…俺もさすがにトナカイが光の速度とかで走るとは思ってないからね。」



何でトナカイの走る速度とか知ってるの、一。
え?それ当たり前の情報?
常識な感じ?


「何人かいて手分けしたほうが効率的だよね〜。ほら、サンタっておじいちゃんのイメージだし。一人じゃ疲れるでしょ。」


そんな楽しくない妄想いらないよ、総司。
老体にムチ打って働くとか嫌だよ。


「若いサンタもいるんじゃねえの?世代交代しないと続かねえもん。」

「若いサンタか。」

「ああ。いるよね、だってほら、町中にミニスカサンタがいるもんね。」


いや、あれは本物じゃねえ。
バイトだよバイト。
ほとんど女子大生だと思うけど。


「ねえ、二人はミニスカサンタが何でも(して)あげるって言ったら何をお願いするの?」



こら、総司。
何でミニスカ限定ですか?おじいちゃんはどこいったんですか!?
しかも何でもあげるの間になんか心の声が入ってたよね?!表情でわかるんだけど。


「えー。うーん…。」



平助は邪な心がないって信じてる。
いや、でも平助も男子高校生だし…。


「俺ゲームほしい!…あ、でもくつも欲しいんだよな。あー最近ウォークマンの調子も悪いからそれも買い替えたいし…。」



平助、君は天使なんじゃないか?
間違って人間界に落ちてきたんだね。そうだね。


「…僕は平助君のそういうところ好きだよ。」



絶対つまんないって思ってるよね、総司。
完全にがっかりって顔してるけど!
ああ、総司は悪魔だけど人間界に落ちてきちゃったんだったね。忘れてたよ。



「一君は?」

「お…俺は…。」


ええ!?
一、ミニスカサンタに何かしてもらいたいことあるの!?
あ、してもらいたいって言っちゃった。
何かもらいたいものあるの!?


「俺は…。」


一が黙って考え始めた。
そんな真剣に…。
総司も平助も真剣な顔をして一を見ていて、私もその一人だ。
無論顔は前を向いたまま、目だけ必死に横を見てるから私の目玉は疲労困憊状態だ。


(真冬にミニスカートなど…寒くはないのか?風邪をひいたらどうするつもりだ。こういうときはあたたかいものを用意するべきか?飲み物?いや、服か…。しかし、女子は真冬でも平気でスカートをはいたりするからな。本人が望んでその格好をしているのならば服は適切ではない。飲み物や食べ物は好みがわからん。一体俺は何をしてあげられ…。)



「もしもーし、一君戻っておいでー。」


(…しまった。俺が何かをあげるのではなく、何かをもらうのだったな。だとしたら、相手の望むものが何なのか、それがわかる術を…。)


「一君?はじめくーん!」



どこまで妄想してるの!?一!
こんな真昼間っからいけませんよ!

っていけないのは私の頭だ。


「では…超能力を。できれば相手の心が読めるような。」

「どういう経緯でその答えに至ったのか説明してくれる?」

「怖いよ!怖いよ一君!!!相手の心読んでどうするつもりだよ!?」


世界征服…ですね、わかります。
ってわかるか!!!
サンタがそんな能力ほいほいとくれてたら今頃地球滅亡だよ。



「一君って…時々よくわからない妄想するよね。」

「ああ。」

「あ、次移動教室だよ、そろそろ行かなきゃ。」


総司が立ち上がりながら二人に移動を促した。
一も平助も続いて立ち上がる。


「そうだな。次は美術だ。」

「よっしゃー三人で誰が一番上手にトナカイ描けるか勝負しようぜ!」



楽しそうに話しながら三人は出ていった。


なんか…全然夢のない妄想話だったな。今回。
大人になるって悲しいね。



ちなみにトナカイを一番上手に描いたのは一で平助はどう見てもギリギリ鹿、総司に至ってはギリギリ獣ってわかるぐらいのレベルでした。









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