妄想男子4



珍しいこともあるもんだ。
先生が休みで化学の時間が自習になったんだけど。


ちらり横を見ると一がうつらうつらと船を漕いでいた。
あの一がだよ??


一の前の席の平助が寝ているのはいつものことだけど。…あ、平助も寝てるや。期待を裏切らないよね。


後ろの総司はもう堂々とマンガ読んじゃってるよ。勉強しろ。


起こすべきかなぁ?




あ。





ガクッと大きく体を揺らし、一が目を覚ました。
ジャーキングっていうんだっけ??

すると後ろからクスクスと声がする。




「珍しいー。一君が居眠りなんて。」


「俺は寝ていたのか?」


「うん。」



「はぁ…。」


「どうしたの?疲れてるの?」


「いや。ただ、変な夢を見た。」


「夢?」


「夢と現実の狭間で天使と悪魔がでてきた。」





うん。
夢じゃなければ妄想ですね!



総司は一瞬驚いたような顔をしたけれど。
おもしろそうと思ったんだろう、すぐに微笑んで話を促す。



私も聞こうじゃないか!
忍者・新選組・ドラえもんに続く妄想話!!





「天使と悪魔に寝ちゃだめだ〜とか寝ちゃえ〜とか言われたの?」


「あぁ。」




一は思い出しているのか、なんだか疲れた顔をしていた。




「それが…総司と平助だったのだ。」


「え?僕?僕と平助君?」






天使と悪魔が?
総司と平助!?




くっ!一の妄想斬新すぎる!
笑いたい。
思い切り笑いたい。






…でも、平助は無邪気で天使って感じだし、総司は。うん。悪魔っぽい。









注:悪魔どころか魔王です。











「しかも、俺の所にでた天使は総司で悪魔が平助だったのだ。」








えっ…。




えぇえええええ!?!?



総司が天使!?


いや、平助はまだ何ていうか、可愛い小悪魔?ほら、バイキンマンぐらいの悪さしかしないでしょどうせ。


だけど総司が…天使?







笑いたい。
笑い叫びたい。







「ふーん。ま、僕天使みたいに優しいからね。」


なんかほざいてますよ。
天使のフリした悪魔が。
どうりで一が疲れ果ててるわけだ。



「で?二人はなんて??」


「眠りそうな俺の前に二人があらわれて…。」





―回想中―


「一君、寝ちゃだめだよ?」


「総司?」


「違うよ、僕は天使だよ。」


「冗談はやめろ。」


「失礼だなぁ。天使の格好してるでしょ?」


「何を企んでいる?」


「もう、この姿はそんなに信用がないの?それに僕は総司じゃないよ?」


「は?」


「僕はオキエルだよ〜。」










 「ぶはっ!!!」



もう我慢できない。
なんだ、オキエルって。
天使だからってエルつけりゃあいいってもんじゃないから!
一天才!


あ…二人がこっち見た。
ごほんごほん、咳したフリしておかなきゃ。


「そしてその後平助が…。」






―回想中―


「寝ちゃえって!どうせ自習だろ?」


「!!平助?」


「でたね、悪魔。」


「少しぐらい寝ても大丈夫だよ。お前頭いいんだから。」


「悪魔?」


「俺はデビスケって言うんだ。よろしくな!」









 「っ…。」



ギリギリセーフ。
私は笑いをこらえる。
自分の呼吸と引き換えに。


いや、もう息できないって。
なんだよ、デビスケ。デビル+平助!?
可愛いなぁ、どんな悪いことできるわけ!?
悪魔がよろしくしちゃうなよ!


「笑いすぎだ。」


「っ…だってそれひどいね。」



あ、総司も耐えられなかったんだ。ですよね。
これも全部一の妄想でしょ?
一の頭の中覗いてみたい。


「それで?一君はどうしたの?」


「不本意だが、総司の言うことが正しかったからな。起きようとしていた。」


「今さりげなく失礼なこと言ったよね?」


「しかし、何故か今回の眠気は強烈なもので…。」





―回想中―




「っ…。」


「うんうん、寝ちゃえって。」


「駄目だよ、一君。寝ちゃだ・め!」




――バシッ




「!?」


オキエルが一の頭を叩く。


「ほら、一君。寝ちゃだめでしょ?」








っ…。
眠りそうになった瞬間に叩いて起こすとか天使のやることじゃない。
怖いよオキエル。




あ、一の後ろのオキエルも怖い笑顔で聞いてるよ。夢の中で叩いて喜んでる顔だあれ!



「へぇ、ほんと僕って優しいね?」


「それで、その後平助が…。」



―回想中―



「ちょっとオキエル!何すんだよ!」


「何?悪魔は黙っててよ。祓ってあげようか?二度と現れないように。」


「うぅ…こっ怖くなんてないからな!」


「怖がっているようだが。」


「寝ちゃえって。最近遅くまで勉強しすぎなんだよ。体調崩すぞ?な??」


「むっ…。」








な…なんていじらしいんだ!デビスケ!
聞いた!?聞いとけオキエル!
悪魔の囁きがこんなに優しいものだって知らなかった。ごめん、悪魔さん!



「ふーん。平助らしいけどそれじゃ全然悪魔っぽくないね。」


「あぁ。そんな二人のやりとりを聞いているうちに眠りかけて…。」


「で、さっき起きて今に至るわけね。」




――キーンコーンカーンコーン





「うわっ!寝てた…。」


「デビスケは天使と悪魔の出番もなく、さっさと寝てたみたいだけど。」



チャイムの音でとび起きた平助がくるりと後ろを向いて一に抗議をする。


「もー!なんでいっつも一君起こしてくれないんだよ??」


「はいはい、デビスケ。人のせいにしちゃだめだよ。」


「へ?デビスケ?」


「そうだ、デビスケ。人に頼ろうとするからいつもそうやって寝てしまうのだ。」


「ちょ…ちょっと、何言ってるの?」


「さて、次の授業は移動教室だね、行こうか。一君。」


「あぁ。」


「待ってって!何の話!?!?」




さっさと教室を出て行こうとする二人を大慌てで平助が追いかけていった。
…教科書持ってけ。



でも今回も楽しかったな。妄想話。
ついデビスケとかオキエルとか呼んじゃいそうだよ、私。


ごちそうさまでした!






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