妄想男子3




窓側に目を向けると世界史の教科書を真剣に見ている一がいた。
そんなに見つめたら穴があいちゃうよ、どうして横文字パラダイスのその教科書をそんなに見つめられるのか、不思議でたまらない。


私はその教科書を見ても眠気しかふってこないよ。ほら、一の前にいる平助も同じみたい。


ちらりと後ろの方に目をやると総司も教科書をじっと見ている。


なんか珍しい?
いや、総司はそれとなくいい成績とっているけど、授業を真面目に受けているなんて思わなかったから。…あ、失礼しました。





―キーンコーンカーンコーン






チャイムが授業の終わりをつげ、休み時間が始まる。
先生が教室をでていくと平助が目を覚ました。




「うわっ寝てた…?俺。」




「完全に眠っていた。」




次の授業の用意をしながら淡々と一が答えた。
その言葉にがくりと頭を落とす平助。




「もー!一君、起こしてくれてもいいじゃん。もうすぐ期末なのに。」


「期末が近いとわかっているのに何故眠るのだ?」


「知らないの一君。世界史の授業には眠気を誘う呪文があって…。」


「平助。」


「嘘です。ごめんなさい。」



一の温度のない一言に平助がまたしゅんとなる。
その様子をクスクスと笑いながら総司が見ていた。



「一君も人が悪いよね。寝てるの見えるなら起こしてあげなよ。」


「それでは平助の為にならない。」


「なるほどねぇ。一君がドラえもんだったら厳しいドラえもんになるんだろうね。」


「「は?」」





は?
あ、危ない危ない。私も聞きかえしちゃうところだった。
何、いきなりドラえもんって。



「今千鶴ちゃんにかりてたドラえもん読んでたんだけど。」


そう言って総司が世界史の教科書を広げると見事にマンガが挟まっていた。



こいつ!ドラえもん読んでいたのか!



にっ似合わない。





「総司ってそんなマンガ読むんだ…。」


「総司、授業中にマンガを読むな。」




私の反応は相変わらず平助に近いな。
一の言うことはごもっともだけど。



「何、僕が読んじゃいけないわけ?」


「いや…そういうわけじゃ。」


「だから、そもそも授業中に…。」


「一君がドラえもんだとさ。」












『ドラえもん!宿題ができないよー!』


『自分でやらねば力がつかない。』














「ってな感じで道具だしてくれなそうでしょ?」



間違いなく笑顔が一切ないシュールなドラえもんになるでしょう。




「あはは!確かに確かに。あ、でも結局押しに弱いからさ。」










『そこをなんとかー!』


『うっ…泣くな。今回だけだぞ。』













「とかなっちゃいそう!!!」


「一君、首輪も似合いそうだよね。忠実な犬タイプだから。」




いや、総司。
ドラえもん猫だから。




「なっ何を言う!俺がドラえもんなわけ…。」


「ねずみとかにも意外とびびりそうだよな、一君。」


「ねずみぐらい平気だ!」



むきになる一が可愛いなぁと思っていると総司が標的を平助に変えた。




「ま、一君より平助君のほうが想像しやすいかなぁ。」


「え?俺?ま、一君よりは優しく道具貸してやるぜ!」


へへっと笑う平助に総司が違うよと笑いかける。








『ドラえもん!道具かしてー!!』


『よっしゃ!まかせとけ!えーっと…あれ?あれでもない、これでもない。えっとー。』













「ほら、よくドラえもんが道具見つからなくて余計なものだしちゃうでしょ。平助君にぴったり。」


「どういう意味だよ!総司!!」





そういう意味だよ、平助。
ここから机の中見えるけど教科書とノートが無残に重なってるよ。





「土方先生がドラえもんだと…。」










『どらえもーん、出来杉にしずかちゃんとられちゃうよー!』


『うるせぇ!それぐらいてめぇでなんとかしやがれ!!!』











「あははははは!もうそれドラえもんじゃねぇよ!ただの怖い兄ちゃんじゃん!」



「…。」




あ、一が俯いてる。
絶対想像して笑ってるよ!

土方先生は確かにそう言いそうだけど。







「あと原田先生はね。」






『どらえもん、なんかおもしろい道具だしてよー。』


『いいぜ。えーっとちょっと待ってろ。』


『?』



ガサゴソ…



『悪いなのびた。お前にかせる道具はない。』


『えー!?』


『あと十年ぐらいしたらかしてやるよ。そのとき、しずかちゃんと使え。』






原田先生…。
なんの道具ですか?それ。




「ぶっ!ありえる。」


「でしょ?」


「総司、そのような想像は…。」


「え?一君、なんだと思ったの?」


「…。」






あ、一が黙った。





「永倉先生だと…。」


総司が続ける。








『どらえもーん。ジャイアンに殴られたよー。』


『なにぃ!?男ならやりかえしてこい!ほら、今すぐに!!!!』







「とか言って、筋肉鍛えるためにダンベルとかしかくれなさそうだよね。あの人。」



「ひでぇな、総司。腹筋とか背筋鍛えるマシーンもくれるぜ、きっと。」




筋トレグッズしかくれないのかい。
いやだよ。そんな筋肉ドラえもん。







「総司は…。」



ふいに一が口を開いた。
そういえば総司がドラえもんだったらって考えてない。
平助も目を上にむけて考えている。




「総司がドラえもんだったら?」


「僕はちゃんと道具だして助けてあげるよ。」



にこにこ笑っている総司がドラえもんだったら?










『どらえもーん、ジャイアンとスネオがいじめるよー!』


『へぇ、可哀想に。じゃあ僕が斬ってきてあげるね。』


『え…?』


『二人は空き地かなぁ?なんの道具持っていこうか。えーっと…これとあれと…。』


『どっドラえもん。そんな道具使ったら…。』


『え?何か問題あるの?のびたくん。』





















「…。」


「…。」






怖いよ!!!!!
一も平助もみんな似たような想像したんでしょ!?
顔が若干蒼いからね!



いやだよ、そんな闘争本能むき出しのドラえもん!
殺意しか残らないドラえもん!!

ドラえもんの青は涙の青どころじゃねぇよ!


なんかもう真っ赤に見えるから!!!!!





「ドラえもんは…ドラえもんがいいよな。」


「あぁ。あれはあのような性格だから皆に受け入れられるのだ。」


「ねぇ、二人とも何勝手に話終わらせようとしているの?ねぇってば。」





平助と一君が前を向いて。
私も机から教科書を取り出して次の授業の先生が入ってきた。



「おい授業始めるぞー。」



何の道具をだそうとしたか定かではない原田先生のほうがよっぽど総司より安心な人に見えた今日この頃。









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