妄想男子2


今日最後の授業は情報処理だった。
終わった後も何人かパソコンルームに残っている。
インターネットもある程度見られるし、利用して帰る人が多い。


少し離れたところに総司や平助、一の姿があった。
平助と一はパソコンを使っているようだが総司は二人の後ろに立っているだけ。

早く帰りなさいよ、あんた達。と思いつつ私もここにいるんだから人のこと言えない。


ただ、つい気になっちゃうんだよね。
あの三人の会話って。





「僕たちの親って安易だと思わない?」


「へ?」


「どういうことだ?総司。」


いきなり何を言い出すか。
でもちょっと聞いてみたい。


「だって僕なんて沖田って名字だからって総司だよ?一君だって平助君だって新選組の隊士の名前でしょ?」


「まぁ確かに。うちは親が幕末好きだからなー。」


「俺はわからない。斎藤という名字は少なくないし、長男だからな。」


「でも少しは意識してるって。」


そういえば新選組の隊士と同じ名前の人がうちの学校多い気がする。
あの三人もそうだし、土方先生もそうだ。


「でもどんな人だったんだろうなー。」


「あまり詳しくはないが…組長と呼ばれるぐらいだ。剣の腕はあったのだろうな。」


「僕、確か儚い美少年って言われてなかった?」


「ぶっ…総司が儚いとか。」


平助と同じタイミングで私もふきだしそうになった。
危ない危ない。一人で笑ってる変な人になる。


「…新選組の沖田総司はそうだったのかもな。」


「ちょっと。なんで新選組のって強調するわけ?」


「だって総司めちゃくちゃ健康じゃん!」


「これでも小さい頃は喘息持ちだったよ。」


「藤堂平助はどんな人だったのかなー。」


「斎藤一も気になるよね。」



確かに。
そう言われると気になるかも。
自分と同じ名前の人がいたらどんな人か見てみたい気がする。



「あの時代、写真もあまりないし想像するしかないな。」


「じゃあ総司はー。」


平助が目を閉じて考える。


「なんか飄々と人斬ってそうだよな…。」


「平助君、それ僕で妄想してない?」


「あ。そっか。でも一番隊組長だぜ?強そうなのは間違いないよな!」


「平助は…明るそうだな。」


「ちょっと一君!それだけ?!しかもそれ俺でしょ!!」



一の想像単純すぎ!
ってかただ目の前の平助について言っただけじゃん!




「一君はなんかこのまんまっぽい。」


「確かに。なんでだろ。なんか真面目そう。」


「あの当時の武士は皆そうではないのか?」


「まさか。僕があの時に生きていても土方副長をからかっていた自信があるね。」


「どのような自信だ。それは。」


「あ、土方先生も親が新選組好きだったのかな?」


「土方先生は写真残ってるからいいよね。しかもイケメンって言われてたんでしょ。」


「土方先生は生まれ変わりといってもおかしくないな。」


「確かに!土方先生今でもモテるもんなー!」


「僕たちの資料ってないのかな?」


「調べてみよーぜ!」



平助がキーボードに手を伸ばす。


「どのように?」


「とりあえずウィ○ペディアでしょ。」



私も自分のパソコンで新選組を調べる。



「あ、あったあった。隊士一覧は?」


「これだ。じゃあ総司からなー。」


三人が見ているであろう画面を私も開いた。



「いつも冗談を言って笑っているような陽気な人物。子供好き。」


「すげぇ!総司と同じじゃん!」


「へぇ。そんなこともあるんだね。」


「笑うと愛嬌のあるヒラメ顔。」


「ヒラメ?」


「色黒?なんか思ってたのと違うなー。」


「いや、でも最後に色白で小さかったと伝えられていると。」


「ま、口で伝えられていく情報なんてそんなもんだよね。」


「じゃあ次は俺!」


私は急いで藤堂平助のページを開いた。


「おぉー小柄な美男子だって!」


「学問においても武術においても優れていた。藤堂平助という人物はすごい人だったのだな。」


「ちょっと一君、なんで少し哀れんだ目で見てんの!?」


「なんで平助君は学問に優れなかったのかなって思ってるからだよ。」


「ひでぇ!」


平助が頬を膨らます。
総司がクスクスと笑った。


「戦闘の時は先陣をきったことから…かっかい?かい先生という異名を…。」


「さきがけだ。魁。」


「あはは!もう言ってるそばから…平助君っておもしろいよね。」


「うるさいなー。読めなくてもおかしくないだろー。なんで一君は読めるんだよ!」


「じゃあ次は一君にする?」


「はいよー。」


平助とほぼ同時に斎藤一のページを開けたと思う。



「「「………。」」」



「ぶっ!あははは!」


「くっ!ちょ…総司笑うなって。」


「…。」



あ、一が立ち上がった。
何故?


三人から視線をパソコンに戻す。



 「ふっ…。」


こらえた!
私がんばった!



ちょ!何この肖像画!


あ、一が走って出て行った。


「一君!」


「ちょっと待ってって!」


二人もすぐに追いかけて部屋を出て行った。


「あれ肖像画だからー!」


「背の高い目つきのするどい男って書いてあるからー!」


「ふさふさ眉毛も書いてあるけど…ククク。」


二人のフォローになってないフォローが小さく聞こえた。
多分あれじゃ一は元気でない。


下手に絵や写真なんて残ってないほうがいいんだ。
私も一みたいな顔立ちかなって想像してしまっていたから。

いや、本物の斎藤さんもりりしいと思います!
ただ、一とギャップがありすぎたのでつい。



妄想は…妄想のままが楽しいのねと。
思った今日この頃であります。







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