寒い夜、気紛れに屋上庭園に立ち寄ると小さな電灯の下のベンチにつっこちゃんを見つけた。しかし、その姿はせっかくの屋上庭園なのに空を見上げることなく俯いてひたすら何かを書いていた。

「こんばんは。」

「うわぁっ!え、あ、苗字先輩?こ、こんばんは。」

かなり熱中していたようで私の接近にも気付いていなかったつっこちゃんは私の声を聞いて大袈裟なほど驚いた。彼女の隣に腰を下ろし手元を見ると可愛らしい便箋にこれまた可愛らしい字が2行ほど並んでいた。

「手紙書いてるの?珍しいね。」

「えへへ、羊くんへのお返事書いているんです。」


あぁそっか。そういえばつっこちゃんの甘々彼氏君はアメリカかどっかに行っちゃったんだよね。少し悲しそうに笑う彼女にそんな言葉吐ける訳もなくただ彼女の頭を撫でた。

「私、実は苗字先輩がちょっと羨ましいです。だって先輩は一樹会長といつも一緒に居れるから。」

珍しく他人を羨む彼女に私は学園の男を魅了する麗しのマドンナも結局は女なのだと安心する。

「そんな悲しい顔しないで。私がつっこちゃんの側に居てあげるから、ね?」

細い身体をぎゅうっと抱き締めたら暖かかった。彼女はごめんなさいと言いながら私にしがみついてくれる。笑顔の美しいこの子には泣かないで欲しい。そう思いつつもつっこちゃんのこの甘い香りの移った私が抱き付いたら錫也はどんな顔をするだろうかと考える。








唯一の同性後輩への愛情



麗しき書記と私の話


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