黒い笑顔のお父さんが私の肩を掴む手にギリギリと力を入れる。痛い!痛いよ、お父さん!内心痛がる私に気付いたのか錫也先輩がお父さんの手から私を救うように手を引きよせてくれた。こ、こここの距離感まだ慣れない。

「始めまして、自己紹介が遅れました。俺は東月錫也です。娘さんとお付き合いさせて頂いています。」

錫也先輩が"な?"とものすごい破壊力の素敵笑顔で私の顔を覗き込む。

「そういうことですお父さん。」

ど、どうだ!そんな気持ちでお父さんを見れば涙目でぶるぶる震えている。ヤバいこれは来る。そう思ったのとお父さんが声を上げたのはほとんど同時だった。

「お母さんんん!椿が、椿がぁあああ僕の知らないとこに行くぅう!椿の彼氏がぁぁ!悔しいけどすごくいい男ぉぉおおぅえうえ」

本当いい歳こいて止めて欲しい。僕の知らないとこに行くってなんだ。情けなく喚くお父さんに錫也先輩もぽかんとしている。

「あらあらお父さんお帰りなさい。」

泣きながら叫ぶお父さんの声でお母さんがリビングから出て来た。お父さんなんだから泣かないのとお父さんをあやしながら錫也先輩に視線を映した。

「まぁまぁまぁ、本当にいい男ね。」

「お母さんまで知らないとこに行くぅう!」

「ちょっと黙って。」

「…はい」

「背も高いし、すごく優しそうね。椿をよろしくね。」


お母さんは大型犬を撫でるようにお父さんを撫でた後、わが子を撫でるように錫也先輩を撫でた。そして"お邪魔者は退散するわね"と笑いながらお父さんを引きずりリビングへ行ってしまう。お母さん…いつもながらかっこいい。

「これって認められたって思っていいのかな?」

去り行く我が両親を見届けた後、錫也先輩が呟いた。

「…多分。」

「認められなくても椿を離す気なんてないけどな。」

「…!!」




私はバクバクと鳴る心臓に戸惑いながら夏休み中は帰省しとくつもりだったけどやっぱり寮に帰ることにしようと決意した。







今は両親より錫也先輩と一緒に居たい。

20110419
素敵すぎる

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