「椿と連絡が取れない?」

東月先輩の用事は案の定椿絡みだった。屋上庭園に着くなり東月先輩に肩を掴まれ「椿と連絡が取れない。木ノ瀬君何か知ってるか?」と揺さぶられ、慌てる東月先輩をベンチに座らせ今に至る。

「あぁ。夏休み帰省することは聞いてたんだけど帰省してからずっと電話が繋がらないし、メールも返事がこない。」

僕の隣に座る東月先輩は足を忙しく組み替えたり、携帯を開いたり閉じたり珍しく落ち着きのない。どうせ椿のことだから携帯を無くしたとか水没させたとかその程度なんだろうけど、そんな言葉で東月先輩は納得してくれそうにないから椿の実家に電話することにした。

「東月先輩が掛けます?」

「いや、木ノ瀬君の携帯なんだから木ノ瀬君が掛けるべきだよ。」

「じゃあちょっと待ってて下さい。」


携帯を開き椿の実家の電話番号を呼び出す。通話ボタンを押せば数コールで懐かしい声が聞こえた。

『はい堺です。』

「あ、おばさん。お久し振りです。梓です。」

僕が名乗ると電話の向こう側で声がまぁまぁまぁと明るくなる。

『久しぶりね梓くん。高校でも椿がお世話になってるみたいで。それより椿呼ぶわね。』

「いえいえ。あ、はい。お願いします。」


ゆっくりとしたペースでおばさんが喋った後電話は保留にはならず少し遠くからおばさんの『椿ー、梓くんから電話よー。』と聞こえた。

電話を耳から離し、じっとこちらを見ている東月先輩に居るみたいですと伝えてまた電話を耳に当てた。

『何か用?』

「何か用?じゃないよ。椿携帯どうしたの?繋がらなくて東月先輩が心配してるんだけど。」

ぶっきらぼうに電話に出た椿に若干イラっとして語気を強めたら横から東月先輩に俺の彼女をいじめるなよ?と怖い笑顔を頂いてしまった。

『え?錫也先輩が?どうしよう。携帯、無くしちゃったんだよ。どうしよう梓。』

「いやいや、僕にどうしようって言われてもどうしようもできないから。とりあえず東月先輩に代わるよ。」

やっぱり無くしてただけかとため息をついて僕は東月先輩に携帯を手渡した。










もう帰りたい

20110415
実家に電話

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