夏休みに入り、三日目の夕方。僕は当然の如く部活に勤しみ、充実感のある疲れを連れて先輩方より少し早く弓道場を出たところだった。

「お疲れ様、木ノ瀬君。」

弓道場の出入り口に先日、僕の幼馴染みの彼氏となった東月先輩が立っていて僕を見るなり爽やかな笑顔で話し掛けてきた。


「お疲れ様です。夜久先輩なら自主練しているのでまだ出て来ないと思いますよ。」

東月先輩がここに来る理由は東月先輩の幼馴染みの夜久先輩が弓道部だからなわけで、今までも何度かこんなことがあったから僕は東月先輩に尋ねられる前に夜久先輩の所在を伝えた。しかし東月先輩は眉を下げて困ったように笑いながら手をふり"違う違う"と言う。

「今日は月子じゃなくて木ノ瀬君に用があるんだ。」

「え?僕にですか?」

「あぁ。今から時間大丈夫かな?」

「はい…時間は大丈夫ですが、とりあえず屋上庭園でも行きますか?」

まぁ僕にって言っても椿絡みなんだろうけど断る理由もないので僕と東月先輩は屋上庭園を目指す。どうせ屋上庭園に行くならなら夜久先輩と行きたいな、とか思いつつも東月先輩の笑顔が既に若干怖いのでそういう神経を逆撫でするような発言は控えた方がいいだろう。







20110411
苛立った笑顔

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