「いいぜ。その代わり、俺の質問にも答えてくれ。」
「はい。」
俺の出した条件に堺は素直に頷く。
堺は少し間をおいて口を開いた。
「もし、七海先輩に恋人が出来たとき、夜久先輩が七海先輩のことを好きって分かったらどうします?」
「は?」
驚いて、間抜けな声をだす俺に堺はあ、もちろん七海先輩は彼女さんのことが大好きっていう設定で、と付け足した。堺は冗談を言っている風でもないし、何より雰囲気的にごまかせるものでもなくて俺は頭をひねる。
まだ見ぬ恋人を浮かべるのも、俺を好きだと言う月子を思い浮かべるのも難しい。だけど、もし、堺のいうような状況が訪れるなら俺は月子がどうしたいかを優先するだろう。
「俺だったら月子が答えを欲しがったら返事するし、いらないっていうんだったら気付かなかったことにするな。」
俺がそう答えると堺はすくっと立ち上がる。うお、いつもより高く見える・・・
「・・・ありがとうございます。すごく参考になりました。」
「お、おう・・・。」
「あ、七海先輩の質問は何ですか?」
しゃがんでわさわさと絵を描く道具を広う堺にそう言われ、そういえばと思い出す。
「ああ・・・あの、堺はさ、錫也のどんなとこが好きなんだ?」
自分で聞いといてなんとも情けなくなるが、錫也が愛する人形のようなこいつの言葉が聞きたかった。
「・・・」
再び立ち上がった堺に視線をやると堺は無言のまま前を見て、そして、微かに笑った。
「笑った・・・」
何を見て笑ったんだと、俺も堺の視線に合わす。
「優しいところです。むちゃくちゃな優しさで私のコンプレックスをまとめてくるんでくれる優しさが好きなんです。」
俺に聞かせる気があるのかないのか分かんねぇくらい小さな、でもはっきりした声で堺は歩きだした。
いつ授業は終わったのだろうか、俺たちの方へ錫也と月子が歩み寄ってきていた。
俺も知っていたところ
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