「おい、哉太」
聞き覚えのある声に目を覚ますと案の定錫也が俺を覗き込んでいた。
「おかえり」
「ただいま。月子は?」
「部活」
そうかと頷きながら錫也が席に着いた。
「なぁ錫也」
「ん?」
次の授業の準備をしながら返事する姿は俺の知ってる錫也だ。
「椿のどこが、好きなんだ?」
俺が教室のざわめきに消えるか消えないかの声で言うと錫也は少し笑う。
「全部」
「はぁ?」
期待したものでない解答に多少苛立ったが、果たして俺はどんな解答を期待してんだろうか。
「哉太にも分かるだろ?」
錫也はそう言ったけど俺には分からない。
多分分からない。
期待はずれの
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