椿を追って走ると木ノ瀬君の部屋に着いた。相変わらず椿は足が早くて体力があって俺が天羽君に部屋に入れてもらったとき椿は毛布にくるまって木ノ瀬くんと話していた。

やっぱり悔しいと思った。帰ってきてはじめに連絡するのは木ノ瀬君だったし、あのひどい方向音痴の椿が一度も迷わず木ノ瀬君の部屋に着いた。ふだんは言葉数の少ないのに木ノ瀬君には饒舌だ。全てが羨ましかった。けれど、幼馴染が特別だという気持ちは痛いほど理解出来てそれに嫉妬する俺自身が嫌だった。

けれど、その嫉妬はあまり必要ないようだ。

「私の世界には錫也先輩だけでいいかもって思っちゃった。」

170を超える長身を小さくして毛布にくるまった彼女は木ノ瀬君にそう言ったのだ。俺の来訪に気づいていたらしい木ノ瀬くんが振り返って俺に話を振ると椿はびくりとして毛布を剥いで立ち上がった。
あ、怒って、る。

「なん、で」

泣きそうなときの顔で俺を見る。

「なんで、錫也先輩はそうなんですか!?」

珍しく声を荒らげる椿に天羽くんがぬわわ怖いのだと木ノ瀬くんの背中に隠れた。

「私が、恥ずかしいときとか、情けないとき、追いかけてくるんですか?」

叫ぶ椿を見て、木ノ瀬君までもぽかんとした顔をする。

「錫也先輩にはこんなとこ見せたくないのに!」

そう言って持っていた毛布を投げる椿を思わず抱きしめていた。

「!?」

「ごめん。ごめんな。」

「ゆ、許したくないです。」

俺の腕の中ですっかりおとなしくなった椿を撫でる。サラサラとした髪に顔を埋めたら大好きな香りがした。そして、付き合い始めたときより幾分か慣れたように椿の手が俺の背中に回される。

「だけど、今回は私も悪いので、許します。」

「はは、ありがとうな。」

ああ、可愛い。誰にも見せたくない。
背中に回された椿の腕が強くなるのにドキドキしながら俺も抱きしめる腕に愛を込め少し強くした。





(この人たち、早く帰ってくれないかな…)
(ぬぬ、俺、部屋にもどr)
(翼だけ逃げさせないよ?)
お姫様はお怒りでした

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