僕の携帯で椿との通話を終えた東月先輩がなにやらすごい勢いで去って行った後、寮の部屋に帰ると翼がなぜか僕の部屋で実験をしていた。珍しく爆発する気配もなく黙々と何かを作り上げているので僕は僕で課題をこなすことにした。
計算式がいいテンポで解けていたとき控えめに部屋のドアがノックされた。
「・・・ちょっと翼出てよ。」
「今、手離せない。」
僕も手離せない、というか離したくないんだよ。そう言うと"梓の部屋だろ"と正当な返答をされて僕は仕方なく部屋のドアを開けた。
「はいはい・・・って椿?」
開けたドアの先には居るはずのない椿が居た。
「ん?椿?」
僕の声に反応して翼がこっちを向く。
「おじゃまします。」
「は?ちょっと、」
椿はいつもの無表情で一言言うと僕の了解も得ずずかずか入ってきた。
「どうしたわけ?」
椿の背中にかけたその問いに答えはなく椿は僕のベットから毛布を取るとそれに包まって部屋の隅に座りこんでしまった。
僕はこんな状態の椿をよく知っている。
感情表現が下手な彼女の
20110430
珍しい状態
[ 9/20 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]