今から降りたバス停に戻れば次の学園直行バスに間に合う。このままここに居てもすることはないどころか宮地君にまで迷惑を掛けてしまう。
「ねぇ、天野さんいい加減宮地君から離れてよ。」
少し苛立ったように私を急かす女子と周りで私を凝視する元A組のみなさんに軽く頭を下げお暇しようとしたときだった。
「今日はこの後天野とこの近くに用があるから顔を出すだけで悪いが俺たちは失礼する。」
私の横に立つ宮地君がいつもの調子でそう言いながら"急げ、時間がない"と私の腕を引っ張った。え?用事って私たちはこの同窓会に参加するために来たはずでしょう?他に用事なんてあるはずないのに…元A組のみんなの惜しむ声を背中に受けながら宮地君と私はさっき来た道を戻り店から出た。
「宮地君、私のことなんか気にしなくていいのに。」
微妙に気まずい雰囲気の中何も言わず歩き続ける宮地君の背中に話掛けた。
「ごめんなさい。私やっぱり来るべきじゃなかった。ねぇ、宮地君戻って。みんな宮地君を待ってるよ。」
女子の冷たい視線を思い出して情けないことに今更悲しくなった私は腕を掴んだままの宮地君の手に話し掛ける。
「この先に弓道具屋がある。丁度買わなければならないものがあるんだ。」
宮地君はいきなり歩く速度を落し私の隣に並んで手を離した。私の問い掛けにかみ合わない台詞を口にする宮地君は前を向いたまま。
「着いて来てくれないか?」
「う、うん…」
この人は本当に優しい人だ。今日初めて中学時代がむしゃらに勉強して友達や青春などを掴み損ねたことに後悔した。だけど今日、今まで一番星を好きになって、星月学園に入って良かったと思った。
星座の導きで今、本当に私たちの青春が始まる。
20110412
星座の導き
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