私が、宮地君を、




好き




頭の中で言うと頭の中が空っぽになったようにその言葉だけが反響した。そして、犬飼君たちに言われた言葉が思い出された。違う、違うそう言って否定した言葉を思い出した。知らないということは怖いことだ。本当に。

「私、宮地君が、」

ここは教室だ。しかも、もうすぐ授業の始まる教室だ。クラスメイトがたくさん居る。

「宮地君が」

横に居る宮地君と視線がぶつかる。

「天野、」

「私、宮地くんがす」

知ったばかりの答えを言おうとしたら宮地君の手が私の口を被って叶わなかった。驚いて目を見開くと宮地君が真っ赤になりながら眉間に皺を寄せる。

「そ、その続きは俺に言わせてくれ。」

私の口から手を離しその手を拳にした。

「こういうのはちゃんとした方がいい。だから、少し待っていて欲しい。」

「…はい、待ってます。」

「ああ、そうしてくれ。」

照れたように笑うこの人をきっと私はあの日からすき、だったんだ。待っている。長い間、私はこの感情を待たせたんだからおとなしく宮地君の言葉を待つことにしよう。

「おーい!青春しているところひじょーに悪いんだが、授業、はじめるぞー!」

優しい気持ちになったところで大きな陽日先生の声で我に返る。幸せに浸っていて気付かなかった。この時間のくせにおかしいくらい教室が静かだ。

「な!?」

「は、はる、陽日、先生!!」

「はい、宮地も天野も席についたついた!そして、犬飼は帰れ!」

「やっべ!青空に怒られる!!」

いつのまにか私たちを凝視していたクラスメイトが散り、犬飼君がバタバタと教室から出ていった。陽日先生の言葉で戻った現実で私は自分を叱咤する。この程度の出来事で周りが見えなくなるようではまだまだだ。精神がたるんでいる証拠だ。

急いで授業の準備をしながら宮地君の方を見たらクラスメイトに集られるようにからかわれていた。きっと今日の授業は当分始まらないだろう。注意する陽日先生もクラスメイトと一緒になって騒いでいる状態だし。学生と教師たるものがみっともない。

だけど、まぁ、この恥ずかしさも、情けなさも、幸せもきっと全部セイシュンだ。

尊敬すべき顧問が言うのだから間違いはない。


私は目を閉じてこれから一緒に歩むであろうレンアイカンジョウによろしくお願いしますと挨拶をした。



待たせて、ごめんね
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