「もう一度だけ、抱きしめてもいいか?」

そうしたら、何か分かりそうなんだ。


そう言った宮地君に私は頷いた。

「私も、そんな気がします。」

伸ばされた手はさっきよりも控えめで、距離が縮む速度もゆっくりだ。


思っていたより宮地君は背が高い。そして、暖かい。髪は一本一本まで綺麗な色をしているし、いい匂いがする。

「天野」

耳元で囁かれた私の名前は今までで一番いい音で響く。胸がきゅっと狭くなるような感覚。

「苦しい。」

思わず漏らした言葉に宮地君がぱっと離れる。

「す、すまん。」

「い、いや、あの、物理的に苦しいとかじゃなくてですね」

さみしいと泣く私の中の何かに戸惑いながら慌てて、離れた宮地君の袖を引く。

「胸が狭くなるというか、こう、きゅーっとなって苦しい感じがするだけで」

恥ずかしい。なぜか、すごく恥ずかしい。

「離れたら、なんか、寂しくなるの、で、」

途切れる言葉に耳を傾けてくれる宮地君。その姿は麗しい。いつもよりもこう、なんか、キラキラという擬音語がつくようなそんな麗しさだった。




「もう一度、抱きしめてもらってもいいですか?」




破廉恥だ。私がこんなこというなんて。


きゅっと優しく、それでいてさっきより強く圧迫される体と伝わる宮地君の体温に埋まりながら私は離されないようにずっと追っていた大きな背中に手を回した。


苦しい、苦しい
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