昨日の帰り、明日こそ居残り練習をしよう。そう決意したもののそれだけではここ何日分かの削減した練習を補えないと思った私は朝早く弓道場にやってきた。
誰もいない道場はしんとしていて広く感じた。朝独特の凛とした空気が心地好い。目を閉じれば宮地君の射形が脳裏に浮かぶ。美しい姿勢、力強い弓。あとどれだけ努力をすれば彼に近づけるだろうか?
遥か遠い憧れの人を思い私はゆっくりと弓を引いた。

とん

真ん中に近いところに弓が刺さり私は肩を落とす。まだだ。まだまだダメだ。

「大分上達したな。」

しかし掛けられた言葉は思いと反対のもの。

「宮地君!おはようございます。」

予想外の宮地君の声に嬉しくなって振り替える。最近、白鳥君や犬飼君や部長のおかげで教室でも部活でも宮地君と話せていなかったから無意識に顔が緩む。いかんいかん平常心。

「おはよう天野。久しぶり、だな。」

そう言った宮地君は珍しくキョロキョロと挙動不審だ。

「どうしたの?」

「あ、いや、すまない。」
だんだんと挙動不審さがます宮地君に不信感を募らせる。ふらふらしながら後ずさる宮地の顔は赤い。これは、あれだ。

「謝ることはしてないですよね?それより、顔赤いよ。風邪でも引いたんですか?」

熱を測るため宮地君の額に伸ばした私の手は額に届くことはなかった。

そしてかわりに私の体は宮地君の腕の中に居るようだ。








副部長は不調の様子
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