入部してから約一ヵ月。やっと慣れた、と言うか弓道と言うものが何たるかは分かって来た気がする。弓道着は一人でしゃんと着られるようになったし、弓も構えられるようにもなった。そして驚くべきことに夜久さんと仲良くなれた上に友達が増えた。一ヵ月でまさかの大躍進に幼馴染みと両親はびっくりだ(ちなみに私もびっくりだ)。
宮地君と会話する量はあまり変らないけれど、宮地君と同じ目標に向かい努力していることで満足だ。あわよくば部活仲間として卒業しても覚えていてもらえるかもっていう可能性が出来たことでちょっとにやける。
「おいおい天野、顔が緩んでるぞ〜?」
「犬飼君?!」
私の肩に手を置き犬飼君が自分の視線を私の視線に合わせる。視線の先は宮地君。
「んん?宮地か?宮地に見とれてんのか?」
犬飼君がサメッ歯でいじわるく笑いながら私を茶化す。
「ち、違うよ!今は部活中なんだから真面目に部活しなきゃ!」
「そんなに照れるなよ。お前が宮地のこと好きなのは本人と夜久以外みーんな知ってるからな。」
「応援してますっ千歳先輩!」
「かっこいい奴はいいよな〜」
犬飼君の発言に小熊君と白鳥君まで入って来た。金久保部長といい犬飼君といいなんなんだ。
「犬飼君、小熊君、白鳥君。確かに私は宮地君のこと好意的には思ってるけど、それは宮地君のあらゆる事に対する真面目さへの尊敬みたいなものなんだよ。分かる?」
犬飼君たちを見据えてちょっと恥かしいけど正直なところを話す。
「だから、尊敬する宮地君の側に居たいって思うし、気が付いたら見ちゃったりするの。はい。分かったら練習しようよ、練習!」
少し早口に言い切って犬飼君たちの背中を押す。私に押されながら振り返った犬飼君は焦ったように引きつった笑いをする。
「なぁ天野。さっきの本気じゃないよな?本気でその気持ち、尊敬だと思ってないよな?」
何を言ってんの?本気に決ってるでしょ。こんな恥かしいこと何回言わすんだと半ばヤケになりながら犬飼君に返して私はさっさと的前に立った。
一歩でも近付きたい。
20110424
貴方みたいに
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