きっちりゴールデンウィークの課題を片付けて、弓道部の見学に伺わせて頂いたのはあれから三日後のゴールデンウィーク最終日のことだ。自主練をすると言う宮地君に着いて来て通常の部活開始時間より早いのでひとまず宮地君の見学をしている。

気持ちのいい音を立てて宮地君の放った矢が的にあたる。思わずため息が出た。本当に宮地君は何しても素敵だ。

「恋、かな?」

後ろからいきなり掛けられた声にびくっとして機械のようにギチギチと振り返ったら弓道部の部長さんが居た。

「お、お邪魔しています。」

「えへへ、驚かせちゃったね。僕は金久保誉。部長です。宮地君から話は聞いてるよ。」

天野千歳さんだよね?そう言いながら金久保先輩は首を縦に振る私の横に座る。

「弓道に興味があるんだってね。それは宮地君より?」

にっこり笑う金久保先輩。な、なんだこの先輩。なんてことを聞くんだ。

「えっと…」

なんて返そうかと口籠る私の発言を金久保先輩はちょっといじわるだったねと遮る。

「いいんだよ。宮地君が好きだから入部するんでも真面目に弓道に向き合ってくれるなら僕は構わない。むしろ大歓迎だよ。」

「ちょっと、待って下さい。あの、私は弓道に興味をもっただけで宮地君が好きとか、恋とかでは…」


依然余裕たっぷりの笑顔で私を見る金久保先輩の言葉に反論の言葉を口にするもだんだんと声が小さくなってしまう。

「え?宮地君のこと嫌いなの?」

「そ、そういう訳では、」

正座した足の上に置いた手を見つめ返す。私なんで初対面の人にこんなに辱められているんだ?

「ふふっ、やっぱり好きなんだよね。さっき宮地君を見てる目がそう言ってたもん。」

「目!?」

ぎょっとして目を押さえた。小さな足音がしたので押さえた手をそっと離すと宮地君が私たちの目の前に立っていた。金久保先輩とあんな会話をしたばかりだからちょっと顔を見るのが恥かしい。

「部長来ていたんですか。」


「うん。千歳ちゃんとお話してたんだ。あ、そうそう千歳ちゃん弓道部に入ってくれるんだって。」

「え?」

まだ私はそんなこと言ってない。だけど宮地君がキラキラした瞳で「本当か?なら一緒に全力でインターハイ優勝を目指そう。」なんて言うもんだから私は「よろしくお願いします。」としか言えなかった。








恐るべし部長

20110420
鋭い部長の誘導術
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