バツンという音が部屋に響いた。暖かい手のひらに頬を優しく撫でられて目を開ける。

「終わりましたよ。星華先輩。」

「錫也、ありがと。」

「いえいえ。ちゃんと毎日消毒するんだぞ。」

「はーい。お母さん。」


ふざけて彼をお母さんと呼べば彼は眉を下げて困ったように笑う。右耳を撫でると先程開けたばかりのピアスの穴がじゅんとした。穴はこれでみっつだ。どれも右耳に開いている。耳たぶにふたつそして新しく軟骨にひとつ。軟骨は耳たぶと違い少し痛い。多分当分の間は寝返りしても痛いだろう。まぁ私は気にならないだろうから問題ないわけだが。

「この穴にピアスを付ける度に錫也のこと思い出しちゃうね。」

そういえば錫也はガラスを抱くように私を抱き締めてくれる。

「先輩。俺、星華先輩が好きです。」

「うん。私も好きだよ。」


無意味だ。こんな嘘で塗り固められた愛情なんて無意味だ。だけど甘い匂いがする愛情だ。









しばらくして私がお腹がすいたとゴネたら錫也が食堂を借りてご飯を作ってくれた。

「はい、おまちどうさま」

目の前に置かれたのは白米とお味噌汁それからなんかうまく説明できないけど美味しそうなおかずだ。

「いただきます」

「はいどうぞ。」

ニコニコ笑う錫也は私を抱き締めたときの男の顔からお母さんの顔になっていた。私はおかずを口に運びながらそういえば私と錫也のエレメントの相性は良かったよなと考えていた。













母親と男を行き来する後輩




20110318
母親的後輩

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