翼はおっきな手で私の背中を撫でてくれる。だけど私の肩に押し付けられた顔は私より辛そうだ。翼は私よりずっとずっと背が高いから私が手を伸ばした背中は猫みたいに曲がっている。
「翼…ねぇちゅーしようよ。今度は唇に。」
そう私が翼の耳に呟くと翼は泣きそうな顔で私を見た。
「ねぇいいよね。」
返事は聞かない。私は両手を翼の頬に添えてその唇に自分の唇を押し当てた。
「星華はぬいぬいが好きじゃないのか?」
キスした後翼がまた発明品をいじくりながら私に問う。
「好きに決ってんじゃん。」
「じゃあ、なんで俺にキスしたんだ?」
泣きそうになりながらうつむく翼を優しく抱き締めてごめんねと謝った。
「俺、聞いた。星華はこの間怖いお兄さんとちゅーしてたって」
私は母親じみた可愛い後輩の顔を思い浮かべてくすりと笑った。彼は優しくてとびきり意地悪だ。
「誰から聞いたの?」
私がそう言うと翼は口ごもる。
「ぬいぬい」
「かずくん?」
翼が私の顔を見ることが出来ないように翼の肩に顎を乗せる。そうだ。一樹は知ってていいんだ。私が錫也とキスしたことも、翼とキスしたことも。全部全部知ってていいんだ。
それじゃなきゃ意味がない
20110317
浮気的彼女
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