生徒会室の前に辿りついたら想像通り中からつっこちゃんと副会長くんの怒声が聞こえる。

「ふふ、」

緩んだ口元から笑いを吐き私は生徒会室の扉を開ける。

「こんにちはー」

「お!星華、もうすぐ終わるからちょっと待っとけ。」

「一樹会長!もうすぐどころの量じゃないですよ!」

「彼女さんと帰りたいんでしたらなんでさっきまで遊んでたんですか?」


一樹の机の上には大袈裟とかじゃなく書類が山積みになっていた。私はわいわいと盛り上がる三人を見つつソファに腰掛ける。ラボからはガチャガチャと音が聞こえるから翼はそこに居るのだろう。

「おい颯斗、星華に紅茶入れてやれ。」

「はい。淹れますから会長は彼女さんばかり気にせずに仕事して下さい。」

「いやいや私のことはお気遣いなく!」

私の遠慮に副会長くんは「遠慮なんていいですよ。」と微笑んで紅茶を淹れに行ってくれた。

「それよりつっこちゃん、久しぶりなんだから、かずくんより私とお話しよーよ。」

ぷりぷりと可愛く怒るつっこちゃんにきゅんとして声を掛けたら飛ぶようにこっちに来てくれる。だが表情はいつもみたいに柔らかくはない。

「そうですね一樹会長と同じくお久し振りです。どこ行ってたんですか?みんな心配してましたよ?」

もう聞き飽きた質問をされ「秘密」と言い飽きた答えを返す。

「てか、みんな心配してたって錫也も?」

自分で尋ねつつ最後に見た星空の下の錫也を思い出す。つっこちゃんはちょっと怒った顔をした。そんな君も可愛いよ。

「もちろんですよ!錫也も私も巽先輩のことすっごく心配してたんですからね!二度とこんなことしたらだめですからね!」


あはは、ごめんごめんと返しながら心の中で錫也にごめんねと言う。直接言えるのはきっともうちょっと先になるから。それから私の可愛いつっこちゃんの間違いにほくそ笑む。気持ちはいたずらっ子だ。

「もう!巽先輩、反省してるんですか?」

ぷっくーと膨らんだつっこちゃんの頬を両手で潰して顔を近付ける。

「つっこちゃん、はずれー!」

「へ?何がですか?」

私に頬を挟まれちょっとおもしろい顔のままつっこちゃんは首をかしげる。そんな彼女と副会長くんが紅茶を淹れて戻って来た事を確認して私は自分の間違いに気が付かないつっこちゃんに答えをあげる。


「昨日から私は巽先輩じゃなくなりました。」


まだよく分かってない感じのつっこちゃんと何かに気付いたようで一樹と私を交互に見る副会長くん、タイミングよくラボから出てきた翼を見て一樹と私だけが笑う。

「今日からは私のこと不知火先輩って呼んでね、つっこちゃん。」


「え、それってつまり…」

「ど、どういうことなのだ…?」


「ほ、本当なんですか?」




各々におもしろい反応を見せてくれる愛しい後輩たち。空気がしっかり固まったところで一樹が立ち上がる。

「おし、こいつらが固まってる間に帰るぞ俺の可愛い嫁さん。」

「仰せのままに私の強引な旦那様。」

ほら、と手を握られ生徒会室を出る。一樹の私より大きな手の暖かさとその手のくすり指につけられた指輪の冷たさを感じながら私たちは夕方の廊下で笑いあった。











出会ったときこんな風に笑い合うとは思ってもいなかった


20110419
不測的終着

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