「好きです。俺と付き合って下さい。」


錫也の告白を受けて愛を振り撒けば愛は返ってくるって本当なんだなとぼんやり思いながら自分に本当に自分は最低だと罵った。


「錫也は優しいね。」


星空の下の告白だなんてクラクラ来ちゃいそうなシチュエーションだけど、私にはクラクラしてる暇はない。長くかけて編み出した人当たりのよい笑顔で錫也に笑いかける。なるだけ優しく手を握る。

「私ね、他人に傷つけられて痛くないから、何にしても手加減ってものが出来ないんだ。」

青い瞳は私を離さないから私の黒い瞳も彼を離すまいと視界に捕らえる。

「喧嘩はもちろんただのじゃれあいのつもりでも必要以上に相手を傷つけちゃうの。だから私が人に執着するとその人は痛くて離れて行っちゃう。」

蘇る幼少時代の記憶に胸が小さくなったような感覚に陥る。

「それが怖いから、私はふらふら生きてるんだ。誰か一人のとこに居たらその人を傷つけちゃうから。」

「俺は…俺は離れない。そんなやわじゃないし、星華先輩の心が傷つかないように守るよ。」


大きな身体で抱き締めらる。この後輩は本当にいい男だ。私にはもったいない。

「錫也は優しいよ。」


私は今日二回目の言葉を口にして錫也の胸を押し離れようとする。しかしその手は錫也に掴まれ握られる。

「さっきも言ったけど私はふらふらして生きてるから。だからね、強引に引っ張ってもらわなきゃ自分がどうしたら幸せなれるかも分かんないの。」

強引に引っ張ってもらわなきゃと言っただけなのに錫也は誰のことか気付いたようで悲しい顔をする。やだ、悲しい顔なんてやめてよ。




「ねぇ錫也は優しいから、私がこの手を離してって言ったら離してくれるでしょ。」






名残を惜しむかのように私の手を握る手が一瞬強くなり、離れた。


錫也は困ったように笑いながら胸に私から離した手を当てる。


「なんでいつもあの人なんだろうな。」

そう言う錫也は今じゃなくて昔を見るように視線を上に上げた。錫也の視線の先の星空は嫌味なくらい綺麗で、私はちっぽけだと再確認する。

じゃあね、ごめんね、ありがとう

これだけを残して私は屋上庭園を後にした。











好きすぎてそろそろふらふらもしてられないんだ



20110415
優渥的男子

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