たっぷりと無言の時間をとってじゃあまずは俺の秘密と不知火先輩は口を開いた。
「俺には星華の未来が見えない。」
やっぱりだ。何回も頭の中で繰り返した推測が真実になった。これで俺と不知火先輩は特殊な能力的な面で平等だ。
「と、まぁこれは予測済みだろう。」
不知火先輩はそう続けて豪奢な椅子をぎっと軋ませた。
「じゃあ次は星華の秘密だ。」
星華先輩はもとから分からないことだらけの人だ。強いのか弱いのか浮気なのか一途なのか全てにおいて掴めない人だ。だからこそ知りたかった。星華先輩の秘密を。
「星華先輩の秘密。」
「あぁ、あいつはな。星華は他者から与えられた痛みや苦しみを感じない。」
よく分からない。そんな俺の表情を汲んだのか不知火先輩は俺を見据えたまま詳しく語ってくれた。
星華先輩は他者が原因の痛みや苦しみは感じないらしい。例えるなら刃物でズタズタに切り裂かれても首を思い切り締められても痛みも苦しみも感じない。そのせいで幼少から化け物だと周りから避けられていたらしい。そのため星華先輩は他者に与えられた痛みの代わりに傷が出来たときの微かな違和感を"痛み"と呼び、頻繁にその"痛み"を感じようとする。きっとピアスを開けてとねだってきたあの時もその"痛み"を感じたかったんだろう。
「その代わり、」
「その代わり?」
そこで言葉を切る不知火先輩に俺は続きを促す。
「その代わり、自分が原因の痛みは人の数倍感じる。昨日の熱も俺達からしたら微熱程度だったが、あいつにしたら40度を越す高熱並みの辛さだったんだろうな。しかも階段からバランスを崩して落ちた。痣になるほどの怪我をした。きっとナイフで刺されたくらい痛かっただろう。」
他人から受けた痛みや苦しみは受けず自分が原因の痛みや苦しみは人の何倍も痛み、苦しむ。その姿は周りに如何に奇妙にまた恐ろしく映っただろうか。
「なぁ、それでもあいつを愛してるって言えるか?」
不知火先輩のその問いに俺はただ立っていた。
あいつは親にも化け物と呼ばれた
20110413
未知的事実
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