教室までの最後の階段、私を引きずりながら誉が胃をさする。
「誉、胃痛いの?」
「はぁ…誰のせいだと思う?」
「星華がまた何かしたのか?」
階段の下から声がしたので誉と二人で見下ろすと一樹がこっちを見上げながら階段を登っていた。
「一樹おはよう」
「おう。」
「かずくん久しぶり。」
「おう…って久しぶりってお前なぁ」
挨拶を交わしている間に一樹は階段をどんどん登ってあっという間に私たちに追いついた。
「あんまり誉を困らせるなよ。」
ぽんと頭に乗せられた手の重さが心地いい。なんかふわふわする。身体が浮くような…足元がクッションになったみたいなそんな感じが……
「星華っ!」
「星華ちゃん!?」
ドッドッバサッ
ぐらりと身体が後ろに傾いて私はあっけなく階段から落ちた。どうやらさっきのふわふわ感は一樹の手の重さによる心地良さとは無関係だったらしい。階段の踊り場に仰向けで倒れたまま蛍光灯を見つめ息を吐く。気を失わなかったものだからすごく痛い。頭とか足とかあとこめかみがズキズキする。
「星華ごめんな。痛いだろ。支えてやれなかった。」
「それより一樹は星華ちゃんを保健室に。僕は担任に知らせてくるから。」
飛ぶように降りてきた一樹が私を抱える。誉はいつものおっとりした行動からは想像もつかない速さで走っていった。てかお姫様だっことか初めてだ。だけどそんなことより私を覗きこむ一樹の表情に悲しくなった。
「やだやだ。一樹、そんな悲しそうな顔しないで。」
一樹の表情が見て居られなくて一樹の首にしがみつく。
「バカ。誰の心配してんだよ。」
一樹の腕の中で私は階段から落ちた自分を酷く責める。
彼にはいつでも太陽であって欲しいの。
20110402
浮遊的落下
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