まだ人通りが疎らな学校までの道を星華先輩の手を引き歩く。時折浴びる視線は星華先輩の放つ様々な噂を帯びている。生徒会長の彼女。俺との関係。甘い誘惑を振り撒く行動。短い歩幅で俺の隣を歩く先輩はそんな視線を全て無視して笑っている。
「錫也は全てが優しいね。」
「星華先輩にだけです。」
「嘘。錫也はみんなに優しいでしょ。」
手を握り直すと星華先輩の右薬指のシルバーリングがひやっとした。
もうすぐ学校そんなときだった。
「おはよう。」
その言葉と共に繋いだが引き離された。振り向くと水色髪の高身長。
「ねぇ星華、こんなこといつまで続けるの?」
温厚な笑顔のまま星華の手だけ握り締めて子供に話掛けるようにそう言った。
「誉、おはよう。」
威圧感を放つ金久保先輩に怯むことなく星華先輩はへらりと笑う。
「僕の質問に答えてくれるかな?」
「こんなことって、可愛い後輩と手を繋いで登校してるだけじゃん。」
星華先輩は金久保先輩に負けない笑顔でははっと声に出して笑いながら俺の腕に自分の腕を絡める。そのとき金久保先輩は明らかにむっとした顔をした。
「星華ちゃんの嘘つき。」
「誉のいじわる。」
むっとしたままの金久保先輩といじわるく笑う星華先輩。
「星華ちゃん。東月くんから手を離しなさい。ここからは僕と教室まで行くよ。」
金久保先輩が星華先輩のをぐいっと引っ張る。
「わわっ誉引っ張んないでよ!錫也、ごめん。誉がご機嫌ななめだから今日はここで。」
「はい。じゃあまた。」
「うん。今日はありがと」
俺からするりと離れた星華先輩は金久保先輩によって引きずられるように学校に消えて行った。
親友に捕獲されました。
20110401
早朝的登校
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