下を向いて部屋の扉を開いたらばすん、という音と共に衝撃を受けた。

「っおっと、」

倒れそうになり反射的に両側の壁に手をつき二人分の身体支える。まだ上着の前を閉じてなかったから薄いシャツ越しにぬくもりを感じる。よく知る白に近い金髪に思わず顔が緩む。

「おはよう」

「おはようございます。星華先輩。」

頭を撫でたら髪がしっとりというかべちゃりというほど濡れている。シャワーでも浴びたようだ。

「星華先輩、頭濡れてますよ。シャワー浴びたならちゃんと拭かなきゃ風邪ひくぞ。」

何も言わず俺にしがみついたままの先輩を引きずりながらまた部屋に戻りタオルを掴み髪を拭いてやる。

「はぁー落ち着いた。」

しばらく黙って髪を拭いてやっていると星華先輩は俺から離れてニコニコ笑う。

「それは良かった。」

「ふふ、ありがと。でも錫也のシャツ濡らしちゃった。ごめんね。」

細い指が俺のシャツの濡れたとこをなぞる。

「どうせ水だから大丈夫だよ。」

「いや、七割は私の涙。」

そう言って今度は星華先輩の唇がシャツに触れた。

「怒らないでね。ここでしか泣けないんだから。」

眉を下げて笑う彼女の頬を両手で挟んでおでこにキスをする。

「怒るわけないだろ?」

「ふふ、錫也の意地悪。」

錫也のこともっと好きになっちゃうじゃない。

なればいいのに。俺に夢中になればいいのに。不知火先輩より愛してあげるのに。

「さぁ、学校に行きますか。」

「うん。ねぇ、手を繋いで登校とか如何ですか?」


名案だと握った手は触れているのに遠い。












場所を提供する男


20110331
涙為的場所

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