時計を見ると四時を少し過ぎていた。もう一度寝れるといいのだが私の眠りは至極浅いため一度目を開けたら簡単には寝られない。仕方なしに起き上がりサイドテーブルに置いた携帯に手を延ばす。こんな時間誰も起きてないだろうな、誰だったら起きてくれるかな。頭の中に先日告白してきたクラスメイトや頼りないが優しい男子、目立たないけど積極的な後輩が浮かんで消える。その後に続けて翼が浮かび錫也が浮かび最後に一樹が浮かんで消えた。
ピピピピピ
ぼーっと考えながら持っていただけの携帯がいきなり鳴るもんだから驚いて一瞬フリーズしてしまった。落ち着いて応答すると相手の小さな声が聞こえる。
「…あ、出た。」
「おはよう、早いね。」
「星華こそ」
電話の相手は翼だった。電話の向こうではガチャガチャやらウィーンやら不思議な音が聞こえるからまた寝ずに実験でもしていたんだろう。
「寂しい」
そう言ったのは翼の方で私はコチコチと回る秒針を見ながらベッドから降りてジャケットを羽織った。
「中庭、来れる?」
「…うん」
「じゃあ待ってるね。」
「うん」
携帯を閉じて靴を履く。隣のつっこちゃんや他の階の先生達を起こさないように静かにドアを開けて私は明け方の外へと足を踏み出す。
翼より先に中庭に着くだろう。そう思っていたのに中庭に着くと翼はもう居た。
「翼、」
呼ぶと勢いよく振り返った翼はやはり寝ていなかったようでくまが目立つ。
「また、寝てないの?」
「ずっとずっと星華のこと考えてた。」
「そっか、ありがとう。」
誰かに考えてもらえるということは素直に嬉しいことだから自然と口から感謝が出ていた。一樹は今、誰の夢を見てるんだろうか?私の夢なら嬉しいんだけどな。
ベンチに座り膝に翼の頭を乗せる。大きな手が私の両頬を挟んで翼の顔に近付けられた。
「なになに?ちゅーしてくれるの?」
ふざけると翼はむっとした顔をする。そんな翼との僅かな距離を今度は自ら埋めて可愛い後輩の鼻にちゅっと音を立ててキスする。綺麗な色の髪を撫でたら翼はゆっくり目を閉じた。
おやすみ、可愛い子
20110326
不眠的夜明
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