星華先輩はいつものようにへらりと笑いながら俺の手から氷を取って開いた手を握った。そしてもう片方の手で不知火先輩の手を握りまた大丈夫と口にする。
「私は大丈夫だよ。かずくんも錫也も心配しすぎ。まるで私のお父さんとお母さんだよ。」
俺は星華先輩のお母さんになりたいんじゃない。
「星華っ…ごめんな。痛かっただろ。」
俺が何かを言う前に不知火先輩が俺の手から星華先輩の手を取り上げて抱き締めた。
「かずくん、みんな見てる。」
「こんな熱出して、なんで倒れるまで言わないんだ。」
「大したことじゃないってば」
「大したことだ。」
倒れるまで言わない?
「不知火先輩。」
「…なんだ東月。空気読め。」
確かに空気は読めていない感じだが俺は不知火先輩に対する疑問が拭いきれなかった。違和感の原因だ。
「不知火先輩は星華先輩が倒れて階段から落ちること、星詠みで見なかったんですか?」
そうだ。不知火先輩には星詠みの力がある。こんな大変な事故、不知火先輩が見ないはずがない。
「錫也、」
明らかに慌てた星華先輩が俺を止めようとする。なんだ。何があるんだ。
「不知火先輩。」
俺がもう一度呼び掛ければ不知火先輩は俺の方を向いて目を閉じた。そしてため息をつくとしょうがねぇなと呟いた。
違和感と彼女の焦り
20110325
不拭的疑問
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