走って生徒会室前まで行くと電話での言葉通り星華先輩がしゃがみこんで泣いていた。

「先輩。星華先輩。」

「うぇっ…す、錫也ぁ。」

俺が声を掛けると座ったまま両腕を広げて俺を呼ぶ。その姿は青いリボンをしているものの俺より幼く見える。広げた両腕を引っ張って抱き締めたらうぅーと泣きながら俺の胸に顔を埋めた。

「寮まで送りましょうか?」

頭を撫でながら聞いたら「敬語は嫌。」と返ってきた。会話のキャッチボールが出来てない。

「寮まで送ろうか?」

「…嫌だ。錫也の部屋がいい。」

幼馴染みに話すように言いなおせばやっと返事が返ってきた。まあ大方予想通りの返答だ。

「分かった。歩けるか?」

「うん。だけど手は離さないで。」

「うん。分かった。」

すんすんと泣く星華先輩の涙をハンカチで拭いてやってから俺は星華先輩の手を握る。それから俺の部屋まで星華先輩も俺も一言も離さないままだった。









「はい、着いたよ。コーヒー入れようか?」

部屋に着いて椅子に星華先輩を座らせて星華先輩用のマグカップを出す。

「うん。」

星華先輩はブラックしか飲まない。砂糖もミルクも入れない。だけどシロップを舐めながら飲む。だから俺はマグカップにコーヒーを注ぎデミカップにシロップを入れて星華先輩に差し出す。

「ありがと」

「いえいえ」

星華先輩は机に飾ってる写真を見ながらコーヒーを飲む。そして写真を指差しながらねぇねぇと俺を呼ぶ。

「錫也。」

「うん。」

「この写真の錫也可愛いね。つっこちゃんより可愛い。」


素直に喜んでいいのだろうか?でも星華先輩は嬉しそうに錫也可愛いと繰返す。

「男に可愛いは褒め言葉じゃないぞ?」

「ふふっ、そうだね。」

嬉しそうに笑う先輩を後ろから抱き締めたら先輩は甘えんぼうだとまた笑う。

「ねぇ錫也、お願いがあるの。」

「うん?俺に出来ること?」

星華先輩が上を向いて俺と視線を合わせる。


「ううん。錫也にしか出来ないことだよ。」


















甘えん坊は果たしてどちらなのか






20110320
限定的御願

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