そんな風に私達が会話をしていると巽がんん・・・と声を出すのでこのまま起こしてしまっては悪いので思わず口を手で覆った。しかし、どうやら先輩は起きていないようだ。さっき見たときと変わらぬ寝顔ですーすーと寝息を立てていた。

「起こしちゃ悪いので、私今日の仕事は寮でしますね。」

「いや、起こすからここですればいい。」

私の提案をあっさり却下した一樹会長は巽先輩の頬を軽く叩いて声を掛けた。

「おい、星華起きろ。帰るぞ。」

「会長、悪いですよ。」

「いいんだ、こいつは無防備すぎる。」

男ばっかの学校で寝るとか勘弁して欲しいもんだ、そう呟く一樹会長は本当にこの先輩を大事に思っているんだと二人の関係に少し憧れた。

「んん・・・かずくん・・・?」

しばらくして巽先輩は掠れた声で一樹会長を呼んだもののまだ目を瞑っている。

「ほら、起きろ。早く起きないとキスするぞ?」

そんな先輩を茶化すように言った一樹会長の言葉に私は思わず恥ずかしくなる。き、キスとか・・・

「んー・・・して。」

「寝ぼけてると素直で可愛いな。」

しかし、巽先輩はまだ目を瞑ったまま一樹会長に腕を伸ばしてキスを強請った。そして一樹会長も満足そうに顔を近づけてそのままキスをした。見ちゃ駄目なのに、顔がそらせなくて黙って見てるとようやく目が覚めたらしい巽先輩が起き上がった。

「ふあ・・・かずくん、今日はもう生徒会いいの・・・」

伸びをしてソファから立ち上がったところでやっと巽先輩が私に気付いて、固まった。

「あ、えっと、はじめまして。書記の夜久月子です。」

とりあえず自己紹介だろうとしてみたけれど先輩はそれに返事をするでもなく私をただじっと見ている。

「・・・もしかして、ずっとそこに?」

「え、あ・・・・はい・・・・。」

「・・・見てた?」

恐る恐るという風に確認してきた見てたっていうのはもしかしなくても一樹会長との・・・その、キスのことだろう。嘘をついてもしょうがないので私は素直にこくんと頷いた。





垣間見た愛情

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