新入生と在校生がびっしりつまった講堂で、一樹が会長演説を始めた。それは去年も見た光景で、私は思考する。

脳裏に浮かぶ髪の長い女子生徒と一樹をちかちかとさせて、すぅっと小さく息を吸った。あの目は、一樹のあの目は女子生徒をとても大切なものを見るそれだった。騒々しい胸を撫でて私は気づく。

「ふふっ」

「どうしたの?星華ちゃん。」

思わず漏れた笑い声は誉に拾われ、誉が不思議そうな顔で私を見た。

「なんでもない。」

「そう?」

怪訝な表情をしつつも誉は私の返答を聞いて前を向く。私もそれに合せ、まだ演説を続ける一樹に視線を戻す。

私は、どうやら勘違いしていたようだ。
人間の関係に永遠などありはしない。そんなこと自分が一番よく知っているはずだったではないか。それは、私と一樹(恋人同士)でも例外ないことだ。

幸せでうっかり忘れていたんだ。私が誰か一人に執着しちゃいけないこと、人の心は簡単に離れていくこと。


私は、学園で有名な浮気症。


巽星華は誰かだけのものにはならない。
そう言われた。

本当は誰かだけのものにはなれないだけ。


危ない。また、孤独になるとこだった。大丈夫。私は大丈夫。そう言い聞かせて私はまた息を吸う。
忘れてしまう前に

[ 11/15 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]