新入生と在校生がびっしりつまった講堂で、一樹が会長演説を始めた。それは去年も見た光景で、私は思考する。
脳裏に浮かぶ髪の長い女子生徒と一樹をちかちかとさせて、すぅっと小さく息を吸った。あの目は、一樹のあの目は女子生徒をとても大切なものを見るそれだった。騒々しい胸を撫でて私は気づく。
「ふふっ」
「どうしたの?星華ちゃん。」
思わず漏れた笑い声は誉に拾われ、誉が不思議そうな顔で私を見た。
「なんでもない。」
「そう?」
怪訝な表情をしつつも誉は私の返答を聞いて前を向く。私もそれに合せ、まだ演説を続ける一樹に視線を戻す。
私は、どうやら勘違いしていたようだ。 人間の関係に永遠などありはしない。そんなこと自分が一番よく知っているはずだったではないか。それは、私と一樹(恋人同士)でも例外ないことだ。
幸せでうっかり忘れていたんだ。私が誰か一人に執着しちゃいけないこと、人の心は簡単に離れていくこと。
私は、学園で有名な浮気症。
巽星華は誰かだけのものにはならない。 そう言われた。
本当は誰かだけのものにはなれないだけ。
危ない。また、孤独になるとこだった。大丈夫。私は大丈夫。そう言い聞かせて私はまた息を吸う。
忘れてしまう前に
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