授業開始2分前


「どうした哉太、また小夜香さんって子のことか?」

「ばっか、ちげぇよ。」

朝からこの会話もう3回目ぐれーした。どうやらこのオカンは俺の嘘に気づいているようだ。当たり前か。

「哉太が悪いと思うなら謝ったほうがいいんじゃないか?」

否定の言葉を聞いた風にもなく錫也は次の時間の予習に視線を移して呟く。

「ちげぇって。」

あいつが気持ちわりぃっていうなら、話さなくとも全てを見通す錫也も十分気持ちわりぃじゃねーか。最早、錫也の前では威厳をなくした否定の言葉を吐いた俺は机に突っ伏した。しかし、錫也が急いで俺を揺さぶる。

「おい、哉太、もう授業始まるぞ。」

「寝る。」

肩を揺する手を払い居眠りモードに入る。しかし間髪入れず首根っこを捕まれる。

「おい、七海、もう授業始まるがちょっと付いてこい。」

「だから、寝るっつてんだろ!」

しつこい制止に寝させろよ錫也と声を荒げて目を開けると視界に錫也。しかし俺の首根っこは引っ張られたまま。そして錫也は俺の上あたりを見て驚いた顔をする。

「お前だとはなぁ。まぁいい。付いてこい。」

くいっと乱暴に引っ張られた方向へ目をやるとよく知る白衣の教師が眠そうに口を開いた。

「星月、センセ?」

「ほら、自分で歩け。重い。」

ぽいっと投げられるように手を放されよろけるが、星月センセはあくびをしただけだ。

「どこへ行くんすか?」

「保健室に決まってるだろ。」

ほら、急げ、俺が寝れない。そう言って俺を気にする風もなく星月センセは歩きだした。



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