臆病者の足音

 
その次の日も、そのまた次の日も小夜香はそこに居た。全然違う時間に行ったのに小夜香は絶対そこに居た。

「哉太、今日は一日サボらなかったんだね。」

そして今日は、珍しく真面目に授業に全部出て空に星が輝き出した頃もしかしてと思っていつもの場所に行くと小夜香は居た。長い髪で顔を隠すように俯いていつもの場所に座って居た。

「お前、授業出てんのか?」

毎日のようにサボる俺が言うのもなんだが、俺がそう聞くと小夜香は悲しそうに笑って首を横に振った。

「だって、哉太いつここ来るか分からないから。」

ここでしか、哉太と会えないから。そう続ける小夜香はなぜか焦ってるみたいだった。小夜香は俺が立ち去るとき、絶対「また明日も来てね」そう言う。どうしてだろう。どしてこの女には出会ったときから俺に会おうとするのだろう。

「なんで、そんな俺に会いたがるんだよ?そもそもなんで小夜香は初めっから俺のこと知ってんだよ。」



「気持ちわりぃんだよ」


俺がそう吐いて立ち去っても小夜香は追いかけては来なかった。正直、言いすぎたと思う。しかし、来るかも分からない俺を待ってこんな時間まで外に座っていた小夜香を見て、いつも俺のことばかり聞いて自分のことを話さず聞けばびっくりするほど冷たい笑顔で拒否する小夜香に苛立った。

そして、月子に聞いても、錫也に聞いても、クラスメイトの誰に聞いても、存在をしらない小夜香が怖かった。


本格的に星が輝き出した夜空の下、体力の限界を感じながら俺は走る。走りながら俺は、きれーな小夜香の顔を思い出して俺は悪くないと繰り返す。

だけど、本当は気づいていた。臆病者の俺はただ、呈のいい酷い言葉にかこつけて俺に会う度、嬉しそうな安堵したような笑顔をくれるこいつから逃げ出しただけだった。




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