長い髪が隠す素顔
次の日、だせー女は宣言通りそこに居た。前の日と同じだせー格好で。
「哉太!」
俺の姿に気付いた奴は馴れ馴れしくも呼び捨てで俺の名前を口にした。しかし、なんかすげぇ嬉しそうに駆けよって来るもんだからなんとも言えない。
「遅いよ!」
「サボんのに早いも遅いもあるかよ。」
「んーまぁそうね。」
そんなことより座ろうよ。哉太とたくさんお喋りしたいの!そう笑いながら彼女は暖かな芝生に座り自分の横を軽く叩いた。
「隣、座って」
「おう」
特に拒否する理由もないから言われた通り隣に腰をおろす。
「あ、そういえば自己紹介してないよね?私は夏目小夜香。好きなように呼んでよ。」
自己紹介をしながらも、小夜香(こう呼ぶことにした)はそわそわと忙しい。
「何か質問はある?」
顔を隠すように長い髪は下ろされているのがもったいない程に綺麗な笑顔が向けられる。
「んー何科?」
聞きたいことは結構あるけど、まずはこのへんだろと定番の質問をしたら小夜香の笑顔がぴしりと固まる。
「…必要?」
「へ?」
「私が何科っていう情報は必要?」
今までの表情や行動が嘘のように冷ややかなものになり俺はビビってしまって情けなくいらねぇと答えた。その気まずい空気を読んだように鳴ったチャイムを口実に俺は立ち上がる。
「チャイムも鳴ったし、帰るわ。」
「そっか、じゃあまた。」
振り返ると小夜香はまたもとの笑顔でそこに座っていた。
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