彼女を初めて見た日

今でも鮮明に思い出せる。彼女の存在を知ったのは入学式からそんなに経たない晴れた日だった。

幼馴染み二人と念願の星月学園に入学したのだが勉強はあんまり好きじゃねーから期を見ては入学早々サボっていた(今もだが)。その日、見つけたばかりのお気に入りスポットで寝ようと喜々としてそこへ向うと俺が寝たかった正にその場所に女が寝ていた。この学園の女は幼馴染みの月子だけだと思ってたからすげー驚いたのを覚えている。

そいつは月子と同じスカートを着てはいたものの上はジャケットではなく自前らしき地味なカーディガンを着ていた。靴下は何故か白。しかもなんつーか中途半端な長さ。長い髪は散らばすように広がっていた。まぁ簡単に言えばだせー女が寝てた訳だ。

起こすのも悪ぃけど俺も寝たい。すーすーと寝息を立てる女に恐る恐る近付いて顔を覗き込んだ瞬間、女がぱっと目を覚ました。なんつーか綺麗な人だ。しかし瞳は綺麗な色をしてるわりに光がない。

「…」

「…すんません…」

何故か何も言わず俺を見る女に思わず謝った。女は俺を驚いたような顔をする。

「私を誰だか知らないの?」

女にしては低めな声でそう聞かれ俺はこくんと頷いた。まぁそりゃあ入学して何日か経つのに数少ない女子生徒を知らないのには自分でも驚いたしな。

「うん。私のこと知らないのは知ってる。」

意味の分からないことを言いながら女は立ち上がった。

「七海哉太。」

バサバサの長い髪に包まれたきれーな顔はなぜか満足そうに笑い俺の名前を口にした。

「なんで、俺の名前。」

「知ってるよ。ずっと待ってたんだもん。」

「は…?」

「ずっと待ってた。明日もここで待ってる。」


じゃあね。俺を待っていたというだせー女は自分の名前は言わずにさっさと消えた。名前言わねぇし、リボンがなかったから学年もわかんねぇし、科もわかんねぇ。なんだあいつとおもいつつきっと俺はわかんねぇことだらけの不思議なこの女にこのとき既に魅了されていたんだと思う。



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