哉太からメールが着たのは夜11時前、やっとの思いで残業を終わらせて会社を出たとこだった。

『すっげーいい写真撮れた』

簡素なその内容に私の胸は締め付けられる。

哉太と私はかつて同じ夢を見ていた。高校生のときは二人で夢について語り合い、毎晩のように夜空を撮った。そんな流れの中で互いに惹かれ合い付き合い始めたのは自然の流れだと思っている。しかし、私には夢を叶えられる程の実力はなかった。そして、今はご覧の通り小さな会社のしがない会社員だ。

『良かったね。また見せてね。』

返事を打ちながら改札を抜けると私と同じようにくたびれた大人たちがホームで下を向いている。

「哉太は星見てるんだろうなぁ」

小さく呟いて空を見上げれば街灯に霞んだ星がある。確かにこんな星空じゃ見上げる必要もないかもしれない。

哉太は夢を叶えた。
今も毎日愛する星たちをレンズ越しに見つめ切り取っている。そんな彼が私は大好きだが、同時に夢を叶えた彼が妬ましくもあった。それ以上に更に大きな夢へ歩む哉太に置いていかれることを恐れている。

ガタンゴトンという音だけが響く電車の中で私はカメラを構える哉太の写真を見る。会いたくない、けど今一番会いたい。

『○○駅ー○○駅ー』

ノイズ交じりの駅員のアナウンスを背に電車を下りて改札を出る。たくさんのスーツをすり抜けるとその向こうに見慣れた銀髪を見つけた。

「え、嘘。」

「名前!」

彼は確か来週まで隣の県にいる筈なのに。しかし私の名を呼びながら駆け寄ってきたのは確かに哉太だった。

「なんで?来週まで会えないんじゃなかったの?」

「いい写真撮れたって送ったろ?どうしても名前に見せたくって帰って来た。でもお前ん家に行ったらいねぇから迎えに来たんだよ。」

「あ、ありがとう」

色んな感情でグチャグチャになりながらお礼を言ったら哉太が手を握ってくれる。私をぐいぐい引っ張りながら哉太は小さな声で付け足した。

「それに、一週間も名前に会えないのは名前が我慢出来ても俺が我慢できねーんだよ。」




大好きだけど、妬ましい。
妬ましいけど、愛してる。



人通りの減った道まで来て、キスしてもいいか?って聞いてきた君に妬みというスパイスを効かせたとびきり甘いキスを
大人なキスを

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