彼氏である隆文から電話が掛かってきたのは久しぶりだった。隆文はもうすぐインターハイがあるらしく部活に打ち込んでいる。夏休みだけど私は隆文との時間が欲しくて寮に残ったもののあんまり意味がなかった。そろそろ自分から掛けちゃおうかな、そんな風に思っていた矢先の電話だった。 始めは適当にお互いの近況報告をしたりくだらないことを話した。 『そういや俺、明日休みになったけどデートでもするか?』 電話の向こうで大好きな声が照れたように少しぶっきらぼうになる。 「でも隆文、最近部活大変で疲れてるんでしょ?無理しなくていいよ?」 がめつい女と思われるのは嫌なので嬉しい本心をちょっとばかり隠して隆文を気遣ってみる。 『あー、なら明日はゆっくり寝るわ。んじゃおやすみ。』 「え?!あ、お、おやすみ!」 ツーツーという電子音を聞きつつ私は予想外の展開に放心状態だ。てっきり『大丈夫大丈夫』的なことが返ってくるかと思ってた。こんなにすんなり引き下がられるとは…。しかしまぁそれだけ隆文も疲れてるってことだから明日は我慢しよう。 私はシーツを頭まで被って眠りについた。 もやもやしていた割にぐっすり寝付いていた私はけたたましい着信音で目を覚ます。だめだ、この着信音うるさすぎるから変えよう。そう思いつつ目を閉じたままもしもしと応答する。 『おいおい、まだ寝てたのか?もう10時だぞ?』 それにしてもひでぇ声。 そう笑ったのは隆文の声だった。 「んー、おはよう。」 『おはよーさん。』 目を擦りながら起き上がる。 「どうしたの?今日は寝るんじゃなかったの?」 昨日の通話を思い出してそう聞くとあ?もう寝たわ。と返ってきた。 『それより窓開けろ。』 「は?」 漫画に出てくるような台詞に私は期待して勢いよく窓を開けた。 『はは、寝起きぶっさいくだなー』 そしたら案の定窓の外に隆文が立っていた。やばい、嬉しいぞ。 『ほら、アホな顔する前にさっさと不細工直して来い。出掛けるぞ。』 窓の外、サメッ歯で笑いながら不細工だと連呼する君にドキドキする私はかなり重症だ。 君に夢中 [mokuji] [しおりを挟む] |