無意識の行動だった。
噂で宮地と苗字さんが付き合ってるのを知って苗字さんのことを諦めたつもりだった。しかし、目の前でキスをしようとするのを止めてしまうのはまだ俺が苗字さんを好きな証拠だ。

「邪魔してごめんな。恋人同士だもんなキスくらいするよな。」

自分に言い聞かせるように言葉にして手を引っ込める。しかし赤くなる苗字を近くで見てこの手で苗字さんに触れたいと思ってしまう。

「じゃあ」

思いを押さえ込み方向を変え幼馴染みの待つ席に戻ろうとした時、ジャケットの裾を引かれた。

「東月君」

振り向くと苗字が俺の裾を摘むように控え目に引いていた。やめてくれ、そんな可愛いことして俺の決心を鈍らせないでくれ。

「どうした?宮地待たせたら悪いよ。」

得意の笑顔で優しく言えば苗字はふるふると首を横に振る。

「わ、私と宮地は付き合ってないよ。」

まさか。都合が良過ぎて目の前がクラっとした。

「ねぇ、私、期待しちゃってもいいのかな?




東月君が、私のこと好きかもって」


恥かしそうに俯きながら苗字さんが呟く。それはつまりこの手で触れてもいいということ。

我慢出来ずに伸ばした手で思い焦がれた苗字さんをとじこめる。

「好きだ。俺、苗字さんのこと好きだ。」

「わた、私も東月君が好きです。」






想いはすれ違った分だけ膨らんだ
もう君を離せない(後編)

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