私は東月君が好きだ。所謂片思いってやつなのだが。今日も昼食時間東月君たちから少し離れた席で級友の宮地と定食を食べながら夜久さんの世話をやく東月君を眺める。東月君が優しく笑う度胸がきゅんとする。 東月君に愛され大事にされる夜久さんになりたいとは言わない。せめて、東月君の近くに居たい。 「天文科にすれば良かったなぁ」 「学業にれ、恋愛沙汰を持ち込もうとするな。」 けしからんと宮地に怒られてしまった。ごめんごめんと誤魔化すように笑ってちらりと再び東月君に視線をやるとばちっと視線があってしまう。しかもニコっと微笑まれてしまった。 「と、東月君がこっち見て笑った!」 「む、まぁ東月も人間だからな。笑いもするだろう。」 「違うよ!そうゆうことじゃなくて!私、上手に笑い返せてたかな!?」 とんちんかんなことを言う宮地に顔を近付けなるべく小さい声で聞く。 「す、すまない。ケーキしか見てなかった。」 「え?なんでよ!私すっごく不細工な顔してたらどうしよう!もとから不細工だけど!」 八つ当たりの如くどうしようどうしようと半ばパニックになって宮地のネクタイを引っ張る。その反動で私の顔に宮地の顔が近付いた瞬間、私と宮地の顔の間に手が差し入れられた。 「東月。」 宮地の声に手から視線を上げると確かにさっきまで少し離れた席に居た東月君が立って私たちの間に手を出していた。 (前編) [mokuji] [しおりを挟む] |