基礎体力作りのための朝のランニング中に俺は何者かに突き飛ばされた。しかも後ろから思い切りだ。気が付いたら体が地面を擦っていた。学園内だからと言って背後に油断した俺の失敗ではあるが少々腹が立つ。

「わふっ!!」

俺が怒鳴るより前に背後で大きな声がして俺が突き飛ばされる前に居たあたりを振り向くと小柄な女子(夜久ではないから星詠み科の苗字名前だろう)の顔にサッカーボールが直撃していた。

「大丈夫かっ?!」

「宮地君・・・突き飛ばしちゃってごめんなさい。」

素晴らしい程のクリーンヒットだった。駆け寄ると苗字の顔はボールの形に赤くなっていた。それなのに苗字は俺に謝る。そんなことより保健室へと声を出したとき苗字が誰かにひょいと抱え上げられた。

「捕まえた、って宮地か?」

苗字を追うように視線を上げるとその誰かは不知火先輩だった。

「不知火先輩、そいつ顔にサッカーボール直撃したので保健室に連れて行かなければならないんです。」

「なぁるほどな。名前がいきなり走り出すから何かと思えば宮地を助けたかったんだな。」

俺の心配はよそに不知火先輩はによによと笑う。なるほど苗字は星詠みの力で俺にサッカーボールが直撃するのを見て身代わりになってくれたというわけか。

「不知火先輩・・・早く連れてってください・・・」

不知火先輩の肩の上で両手で顔を覆いながら苗字が弱弱しく言う。

「本当に顔真っ赤だな。じゃ、保健室行って来い。ほらよっ」

まるでものを投げるような掛け声で不知火先輩は苗字を俺にめがけて投げた。

「!?」

「わ、わわ」

抱きとめた苗字はさっきより赤くなっており、口をパクパクさせていた。

「お、おろして、くだ、さ・・・い」

「む、す、すまない。」

また両手で顔を隠しながら途切れ途切れに言う苗字をおろし、今度は手を取った。こんなに可愛らしい奴に守ってもらうなんて男失格だ。これからは俺がこいつを守ろう。そう思いながら俺は苗字を引っ張るように保健室へ向かった。




多分今、俺の顔も赤いのだろう
守ってあげたい

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