君に恋した一瞬
本当にたまたまだった。たまたま弓道場の近くを通りかかっただけだった。そういえば弓道部ってうちの学校じゃ珍しく真剣に部活してんだよなー。確か同じクラスの犬飼が弓道部だったよなー。そんなこと考えながらちょーっと気になったから弓道場をのぞいた。
パスン
覗いた時丁度我が学園のマドンナが弓を放ったところでその弓は綺麗に的へ当った。
「ふぉお!すごいなー」
「苗字?」
「っうわ!怪しい者じゃありません!」
感嘆の声を漏らしたときいきなり名前を呼ばれた。思わず謝りながら振り返れば呆れた顔の犬飼が立っていた。弓道着姿だ。
「おいおい、慌てすぎだろ。逆に怪しーぞ?」
「いや、いきなり声かけられたら普通驚くし慌てるよ。」
「てかこんなとこで覗くなら中入って見学しろよ。」
「え?いいの?」
「おう。部長には俺から言ってやるよ。」
犬飼の予想外の提案に暇な私は食いついた。ラッキー!犬飼と同じクラスで良かった!
「失礼します」
「はいどうぞ。」
少しして呼びに来てくれた犬飼について中に入ると水色の髪が綺麗な高身長の男子生徒が迎えてくれた。どうやらこの優しそうな方が部長らしい。
「まぁ飽きるまでそこで見てろよ。」
「うんありがと。」
そう言って犬飼は弓を持ってさっさと構えた。的の前に立つといつものバカしてる顔からきりっとした顔になる。ちょっとかっこいい。
……え…?犬飼が、かっこいい…だと?
パシン
犬飼の手から弓が放たれる。一呼吸おいて振り返った犬飼は私を見ていつものサメっ歯で笑う。
「苗字何?俺に見とれたかー?」
「え、あ、そ、そんなわけないじゃん…?」
「疑問系?」
やばい。犬飼見てるとドキドキする。
20110319
[ 11/16 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]