独占欲ゆえの行動
久しぶりの錫也とのデートだからちょっとおめかしをしてみた。錫也褒めてくれるかななんて内心期待しつつ待ち合わせ場所に来るともう錫也は待っていた。
「錫也!遅れてごめんね。」
まぁいつものお決まりの台詞を言い、「待ってないよ。今日も可愛いな」なんていうお決まりの台詞が返ってくると思っていた。しかし今日はお決まりの台詞どころか返事さえなく錫也が瞬きもせず私を凝視している。ちょっと怖いんですけど。
「錫也?」
不安になって名前を呼ぶと錫也が私を抱き上げた。周りの視線がわっと集まる。
「ちょっと、錫也!下ろして、恥かしい。」
「そんなの俺は許しません!」
「え?」
意味不明なことを口走りながら歩き出す錫也。やだ本気で恥かしい。明らかに錫也の家に向かう道を抱き上げられたままずんずん進む。下ろしてという私の願いが叶えられたのは予想通り錫也の家に辿りついたときだった。
錫也のベッドにそっと下ろされてほっと息をつく。落ち着いたところで錫也に説明してもらえますか?とこの行動の意味を尋ねたらごめんと言いながら抱き寄せられた。
「こんな可愛い格好してる名前を他の男の目に触れさせたくなかったんだ。」
無理矢理抱き上げてごめんな、と再度真剣に謝ってくれた錫也には悪いが私は顔が緩むのを止めることができなさそうだ。
耳元で囁かれた言葉に私は愛されていることを実感する。
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