貴方のせいで溶けます
私は彼より一年多く生きているのに彼よりも出来ることは少ない。彼は勉強も運動も弓道も恋も全部全部上手で羨ましい。今握っている彼の左手は細いのにしっかり男の人のもので大きい目は優しくて伸ばした襟足はキラキラ太陽を反射している。彼の自信たっぷりの行動もしゃべり方も愛し方も全部好きで、彼の全てが私を離してくれない。大好きだけど悔しい。そんな感じだ。
「先輩、そんなに見つめられたら溶けちゃいそうなんですけど?」
梓君の一言にはっと我に返り視線を外す。
「先輩、赤くなっちゃって可愛い。」
「か、可愛いくはないよ。」
「僕が可愛いって言ってるんですから可愛いんですよ。」
そう言って今度は梓君が自信たっぷりの私が大好きな笑顔で私の顔をじっと覗きこむ。
「ちょっ、梓君、見すぎ…」
「先輩だってさっき僕のこと見つめてたじゃないですか。」
「それに関しては謝るから…」
「謝らなくていいです。」
ぱっと立ち止まった梓君が私の正面に来て繋いで無かった方の手も握る。正面から見つめられてますます照れる。
「僕は先輩のものですから好きなだけ見て下さい。」
そしてぐっと顔が近付いてきて距離が縮まる。彼の揃った前髪が私の前髪に触れる。
「ちなみに先輩は僕のものなので好きなだけ見つめさせてもらいます。」
触れ合った前髪が熱を持ったみたいだ。
20110325
梓はすごく見つめてくれると思うんだ。←
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