楓×静流(嫉妬→甘々)
2周年記念SS調教執事「嫉妬する楓目線で、静留と甘々」 すもも様リク作品
***
御堂静留。先日病で伏した、同姓同名の不動産社長に成り代わった、花婿候補。
静留さん欲しさに咄嗟についた俺の嘘を、いまでも信じている、可愛い人。
まだ出会ってもいない頃。疲れきった顔をして、小さな営業所の2階から空をみあげるあなたを、少し離れた駐車場からほぼ毎日見ている男がいたと知ったら、どんな顔をするだろうか。
夕暮れの赤い陽に、綺麗な横顔が溶けこんでいく。
その様に心底見惚れていたことを、いつか静留さんにうちあける時はくるのだろうか。
「――っ……」
壁をはさんだ向こう側に、京極と静留さんがいる。
こんなことなら、静留さん一人を会場に置いて来るんじゃなかった。
恋の病に侵された哀れな男の用意した小さな嘘が、まるで策略のように現実味をおびていく。
ただ、静留さんに近付きたかっただけだ。ほんの少しでも触れていたかっただけだ。
ただ、それだけなのに。
「ああ、おかえり楓。それとも、若って言った方がいい?」
ドアをあけるなり、ベットの上で眠っている静留さんの頭を撫でる京極の顔が、卑しげをおびてニヤリとゆがんだ。
「黙れ」
俺の反応を楽しんでいるのか、挑発しているのか、奴は面白い物でも見た顔をして、もういちど静留さんの髪を撫でてみせる。
「可愛いよな、静留って。普通、俺みたいな男の前で無防備に寝れるかね。なあ若?」
静留さんの頬にふれかけた手を、寸前で掴んでとめた。
「今度、この人の前でその名前を呼んでみろ。二度と本国へ戻れなくなるぞ」
京極はますます楽しそうに口の端をつりあげ、笑う。
「本性だしたら、姫に嫌われますよ、執事さん」
「……ご心配なく。嫌われる前に、不要なゴミは排除するだけですから」
***
「あれ……楓ぇ?ふぁ……。なんで楓がここにいるの?」
「おはようございます。私が静留さんの側に居ては悪いですか?」
「あ、いや。そうじゃなくてさ。僕、たしか京極さんの家のパーティに呼ばれてて……」
「ええ、そこで酔いつぶれてしまったようです。さきほど京極さんから私のほうに連絡がありました」
「ええ!?」
困ったひとだ。
心にもないことを溜息まじりにつぶやき、静留さんの頬をなでる。
俺のものだ。沸々とわきあがる独占欲を笑顔の奥におしこめ、水分のすくない、乾いた頬を軽くつねってみせた。
「ひわ……っ」
静留さんの顔が、一瞬あかく染まる。その反応に、無性に安堵しているのは俺だ。
「やはり、まだ花婿修行が必要なようですね」
「うう……。僕、京極さんを失望させちゃったかな」
「大丈夫ですよ。私が上手く言っておきました」
「うん。ありがとう。ねえ、楓……」
「何です?」
「楓はまだ、僕の執事でいてくれる?」
「もちろんですよ」
離しませんよ、静留さん。貴方を欲しているのは、私の方なのですから。
言葉にできない想いをとじこめ、力のかぎり、腕の中の温もりを抱きしめていた。
あとがき
すもも様、この度はリクをありがとうございました\(^o^)/
こんなで大丈夫だっただろうか…。
楓目線ということで、かなりのネタバレになったことと、まだ出てきてないキャラを登場させちゃって、???て感じになってないといいのですが…。
執事はずっと更新中の作品なので、長きにわたり、お付き合いを本当にありがとうございます。
まさか執事にリク頂けると思わず、本当に嬉しかったです!ありがとうございました!
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