陽はまた昇る


「これは一体…」

鬼兵隊の船に忍び込み、紅桜の製造工場のような場所を抜け、一際騒がしい甲板へ出てみたら。
鬼兵隊と攘夷浪士に混ざり、神楽ちゃんと新八くん、髪が短くなった桂さん、プラカードで鬼兵隊を殴り付けるエリザベスの姿を見つけた。

船の至る所が破壊されていて大きな穴が空いている。
しかも船に船が突き刺さってるよこれ、脇見運転だとしたら度が過ぎるよ。
地震みたいな揺れはこれだったのか。

「よかった、生きてた。桂さんも」
「名前さん!?来てくれたんですね!!」
「おぉ、妹よ!兄が心配でここまで追ってくるとは、なんて兄思いの妹おごオォォ!!」
「神楽ちゃんと新八くんが心配で来たんですよ私はァァ!!第一、妹じゃないし考え方ポジティブすぎるでしょうが!!」

頬を押さえて座り込み、反抗期!?いや、照れ隠しか!?と喚く桂さんは放置に限る。
周りに目をやると、あらまぁ…危険人物リストで見た人物が三人もいらっしゃる。

紅い弾丸こと、早撃ちの来島また子。
変人謀略家の武市変平太。
そして、

「おやおや、誰かと思えば…真選組の子猫ちゃんじゃねェか」

くつくつと笑い目を細めるこの男、高杉晋助は、強力な武装集団をつくり大規模なクーデターを目論む超危険人物だ。
鬼兵隊の船だからいるとは思っていたけど会いたくなかった、高杉晋助。だって顔怖いじゃないですか。

「子猫ちゃんってなんですか鳥肌立っちゃうんでやめてください…」
「そう構えんな、俺はお前と殺り合うつもりはねェ。まァこいつらは別だろうが…殺られねェように精々頑張るんだな」
「うん?ありがとうございます…?」

あれ?一番危険視していただけに拍子抜けだ。
命拾いしたかもしれない。
口元に笑みを浮かべた高杉は(もちろん目は笑ってない)、来島また子と武市変平太を連れ、船の内部へ入っていった。


「お礼言ってる場合かァァァ!!」

新八くんが叫ぶと同時に一斉に襲い掛かってきた鬼兵隊。それに対抗するエリザベスと攘夷浪士達。

«桂さん、ここはいいから早く行ってください»
「エリザベス…」
«今度はさっさと帰ってきてくださいよ»

「……すまぬっ!!」



▲▼



エリザベスと攘夷浪士達にその場を任せ、高杉の後を追う桂さんを追いかける。

「ここまで来たら最後まで付き合いますからね!!」
「ヅラァてめっ、帰ったらなんか奢るアル!!」
「お前ら…」
「しゃあないからついてってやります。あと、ちゃんと前見てください。いますよ」


燃え盛る船内で行く手を阻むように立つ来島また子と武市変平太。高杉はおそらく、この先にいる。

「晋助様のところへは行かせないッス」
「いくらフェミニストといえど鬼になることもあります」

綿密に立てた計画が台無しにされ腹が立つチクショーと言う武市変平太。表情は変わらないが常に見開いたままの魚のような目には、明らかに怒りの色が見える。

「ヅラァ、私酢昆布一年分と「渡る世間は鬼しかいねェチクショー」DVD全巻ネ。あと定春のエサ」
「僕、お通ちゃんのニューアルバムと写真集とハーゲンダッツ百個お願いします。あ、やっぱ千個」
「あっズルイネ!じゃ、私酢昆布十年分!!」

神楽ちゃん本当に酢昆布大好きだよね、私昆布の周りについてる白い粉が好きだよ…って違う。

「桂さん!なにぼーっと突っ立ってるんですか、早く行ってください!」
「待て!お前達に何かあったら俺は…、銀時に合わす顔がない!」
「何言ってるアルか!!そのヘンテコな髪型見せて笑ってもらえ!!」

勢い良く飛び掛って行った二人を心配そうに見ている桂さんの背を叩く。

「二人ともそう簡単に殺られたりしませんよ。もしもの時は私がどうにかこうにかします、行ってください」
「っすまない…!あとは任せた!」

はいはい、任されましたよ。
神楽ちゃんと新八くんに何かあったら、桂さんだけでなく、二人を預かっている銀さんも責任感じちゃうもんね。

「読めませんね…この船にあってあなた達だけが異質。攘夷浪士でもなければ桂の配下の者でもない様子……。もちろん、私達の味方でもない。そこの真選組の貴方も、何故一人で乗り込んで来たのでしょうか、お仲間はどうしたのです?」
「なんなんスかお前ら!一体何者なんスか!!何が目的なんスか!一体誰の回し者スか!!」

冷静に考えを巡らせる武市変平太と早口で捲し立てる来島また子。
上から爆撃され、船に突っ込まれ、量産していた紅桜は爆破され、目の前に立つ少年少女はどこの誰かも分からない。

この状況に混乱気味の二人にニタッと笑みを浮かべた神楽ちゃんと新八くんは声を合わせて叫ぶように言い放った。

「「宇宙一バカな侍だコノヤロー!!」」

私?二人を無事にお家に帰すお巡りさんだコノヤロー!
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