オタクは話し好き

銀時side.

土方十四郎とは犬猿の仲だ。顔を合わせりゃ噛み付いて来やがる、いけ好かねぇマヨラーニコチン税金泥棒多串くん。
そんな男が俺の事を坂田氏と呼び、目の前でトモエ…なんちゃらのフィギュアの無事を確かめている。どーいうことだ。

頭にバンダナを巻き、袖のない赤いトップスを黒いスキニーにインして、上に羽織っているジージャンは袖無し。何なんだその、頑張ってお洒落してみたけど拭い切れないオタクの気配が滲み出るファッションは。
認めたくねーけどコイツ…顔はいいからな。格好がアレでもまぁ、うん…似合わねーな。顔と格好が合ってないんだよな、いつも着てるお高そうな隊服はどうしたよ。つーか、真昼間からぶらついて仕事はどうしたよ。

俺と同じ事を考えていたらしい新八がその事について問うと、真選組ならクビになったでござる。あっけらかんとした態度で返され、濁音混じりの発狂じみた叫び声を上げた。

「真選組辞めたの!?な、なんでェ!?」
「つまらない人間関係とか嫌になっちゃってね…危険な仕事だし…大体僕に向いてなかったんだよね。第一志望アニメ声優だったしね〜。まぁ今は働かないで生きていく手段を探してるってカンジかな〜」

働いたら負けだと思ってるってどっかで聞いたセリフだし、それってただのニートじゃねーか!
ToLOVEるの同人本でコミケで荒稼ぎしてみないかとか誘ってる場合か!印刷費にスペース代、交通費…いくらかかると思っていやがる。大体こんな幼稚園児が描いたような絵じゃ荒稼ぎどころか赤字にしかならないからァ!!

「……銀さん、この人本当に土方さんなんですよね?」
「別人にしか思えねェけど本人だと思われる」
「どっちだァァ!!」

同人本に期待が出来ないと分かり、資金調達の為に刀を売るしかないな〜と呟いている。フィギュアを買う為に侍の魂売ろうとしてるよコイツ…!
背負っていた刀を俺達の目の前に差し出して見せ、何度も売ろうとしたがどうしても手放せないし、刀を見た店の人には妖刀だと告げられたと言う。
妖刀ねぇ…本当にそうならこの格好も行動も話し方も説明がつく。…面倒だが、確かめに行くか。


▲▼


結果。妖刀だった。

…端折り過ぎだって?気にすんなよ、銀さんだって暇じゃないの。

千子村麻紗によって打たれた名刀。
その斬れ味もさる事ながら人の魂を食う妖刀としても知られているそれは、母親に村麻紗で斬られた引きこもりの息子の怨念が宿った呪われし刀だそうな。
村麻紗を一度でも腰に帯びた者はその怨念に取り憑かれ、アニメの類いに対する興味関心が増幅される一方で働く意欲、戦う意志は薄弱となっていく…即ち、ヘタレたオタクと化す。
大方その刀のせいで真選組をクビになったんだろうが、アイツらがそう簡単に辞めさせるとは思えない。ましてや補佐として隣に立ちサポートしていた名前ちゃんが引き止めないはずがねぇ。
一瞬だが正気を取り戻し、「俺達の真選組を守ってくれ」と頭を下げたのも引っかかる。
……クビになった理由が他にあるっつー事か。

「…真選組で何かが起きている、そういう事ですか。もしかして土方さんもそのせいで真選組をクビになったんじゃ、妖刀に取り憑かれて何も出来なかったのでは…」
「さぁな。まァ、何が起きてようが起きてなかろうが俺達には関係ねーだろ。これ以上深入りはよそーや」
「でも、あの土方さんが…プライドの高い土方さんが恥も外聞も捨てて僕らに頼み事をするなんてよっぽどの事が…名前さんも連絡が取れないんですよ?」
「オイオイ、マジかよ。なんで名前ちゃんの連絡先知ってんの?」
「気にするのそこじゃねーだろォォ!!連絡取れないって言ってんでしょうが!」

重要な事だろ、新八には教えて俺には教えてくれないの狡いじゃないの名前ちゃん。教えてって言っても毎回はぐらかして教えてくれねーし。

魂食われてヘタレオタクになった上司放っておくなんて、名前ちゃんらしくないんじゃないの?
若干距離を置いて後ろを着いて歩くコイツ、なんでもいいから早く迎えに来てやってくれ。

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -