一日局長に気を付けろッテンマイヤーさん


「一生背負っていくさ!この命、続く限り!」

さて問題です。
真選組局長、近藤勇が言ったこのセリフ。彼は一体何を背負っていくと宣言したのでしょうか。


真選組のイメージアップの為、売れっ子アイドル寺門通こと、お通ちゃんに一日局長として来て頂いたのだが。抜け駆けでサインを貰った近藤さんが隊士から反感を買い足蹴にされるという、早くも問題勃発である。

…という訳で、正解は隊服に書かれたお通ちゃんのサインでした〜!


「もう今日は暴力禁止!その腰の刀も外して!!」
「お通ちゃ…失礼。局長、さすがに刀を外すのは…」
「武器無しで取締なんてできるわけねーだろ、刀は武士の魂…」

体術が出来るとはいえ、武器を持たない丸腰状態では取締もまともに出来やしない。
しかし土方さん、総悟くん、私以外の隊士(近藤さん含む)はなんの躊躇いもなくガチャガチャと刀を外してしまったのだった。
無数の武士の魂が地面に転がってるよ。

「すいませんでした局長ォォォ!!」
「…転職でもするか」

結局、近藤さんからの指示により私達も刀を外す流れになり、真選組=チンピラ警察24時という物騒なイメージを取り払うべく、局中法度の改正を行う事になった。

「今日からこれでいきましょうが焼き」

« 語尾になにかカワイイ言葉を付ける(お通語)こと、これを犯した者、切腹 »
改正前の局中法度はかっこいいけど怖いから、という理由で上記のように決めたようだ。見間違いかな、一番物騒なワードがしっかり入ったままだ。切腹は免れないってことなの?

「土方さん、仕方ありませんぜ。今日一日位我慢しやしょう油を1L飲んで死ね土方コノヤロー」
「お前が使うとより憎たらしさが増すんだけど!!」
「まあまあ、今日だけの辛抱ですよっちゃんイカ」
「そうそう、名前さんそんな感じ!」

一日局長お通ちゃんのイメージアップ改革はこれで終わりではない。
男だらけのムサいイメージを拭おうと、親しみやすさのあるマスコットキャラを彼女なりに考えてきたようだが…それがまた問題だった。

「真選組マスコットキャラ、誠ちゃん」
「全然カワイクねーし!これ、真選組と何の繋がりがあんだよ!!」
「なんか死体背負ってるけど、どっちが誠ちゃんちゃん焼き…?」
「馬の方だようかん」

呼ばれて出てきたのは、背中に矢が刺さった女の子を背負い、口髭を蓄えた哀愁漂うケンタウロス(?)。俯いてやっちゃったなー…と呟いているが、何がどうしてこうなった。発想が斜め上を行き過ぎてる。

「こんな悲しげな目をしたマスコット見たことねーよ!うっすら悲劇性が見え隠れしてるじゃねーか!」
「トシ、今の時代ストレートにカワイイだけじゃ通用しないんだよーグルト。よく見てみろ、なかなかキモカワ…」

パン!と小気味よい音が鳴り、頬を押さえた近藤さんの鼻から血がボタボタと滴り落ちる。

「テメー何しやがんだっふんだ!!」
「あーやめてん津丼!」

どうやら、キモカワという言葉が気に触ったようだ。相変わらず悲しげな目をした誠ちゃんに強烈な平手打ちを御見舞されたのだった。



▲▼



「テロ用心〜!!浪人一匹テロのもとうきびウンコ〜!!」
「語尾に問題がありすぎる」

場所は変わり、人通りの盛んな大通りでテロに用心しましょうね〜と呼びかけるパレードの真っ最中です。
あぁ、局長。そういう路線のアイドルなのは百も承知ですが、女の子がそんな大きな声でウンコだなんて…!語尾につけるカワイイ言葉なら他にあるはずでは!

前方を行く一日局長、お通ちゃんと近藤さんは、道行く人達から好奇の目で見られている事に気付いていないのか、きゃいきゃいと会話に花を散らしている。そんな仲睦まじく話してると、お通ちゃんファンが黙っていませんよ近藤さん。
…あ、言ってる傍から。

「てめェェェェ!!何お通ちゃんとイチャついてんだァ!!」
「ぎゃあああ!!まこっちゃんがァァァ!まこっちゃんの中にもう一人のまこっちゃんがァァ!!」

着ぐるみの胴体部分、上半身が出る穴から伸びた腕は近藤さんの手首をがっしりと掴んでいる。穴の中は暗く、血走った二つの目だけが浮かび上がっていた。
誠ちゃんの上半身はというと、すぐ側の居酒屋で日本酒をチビチビ呑みながら肴をつまんでおり、土方さんに容赦ない蹴りを入れられていた。
打ち付けた頭を擦り顔をしかめた誠ちゃんだったが、お通ちゃんに出番よ!と呼ばれ、置き去りにした胴体に走り寄り、何を思ったのか頭から勢い良く飛び込んだ。

「オイィィィ!!逆っ!まこっちゃんそれ逆ゥゥ!!」
「完全にただの化け物じゃないですか…!あっ死体が落ちた」
「いい!死体はそのままでいい!置いてけ、余計怖くなるだけだから!!」

誠ちゃんは落ちた死体をそのままに走り去ったが、死体役の彼女は置いて行かれたくなかったらしい。むくりと起き上がり土方さんの静止も聞かず駆けて行き、誠ちゃんと共に寺子屋帰りの子供達の集団に突っ込んで行った。

子供と言えばカワイイものが好き!子供は純粋だからイメージを植え付けやすいし親の耳に入れば評判が上がる…と考えたようだが、馬の胴体からトランクスを履いた男の下半身が生えたモノと死体がドカドカ走って来たら恐怖以外の何ものでもない。
子供達は泣き叫んで逃げて行き、その場に残されたのは土埃にまみれ髭が取れた誠ちゃん…じゃない、銀さん…?馬の胴体から顔を覗かせているのは新八くん。という事は、未だに死体役続行中の女の子は神楽ちゃんか。

「なんかおかしいと思ったらやっぱりてめーらかァァ!!何してんだコラァァァ!!」
「違うっ!あの違うんですって!僕らはお通ちゃんに!」
「とりあえず公務執行妨害で連行しますのでこちらへどうぞ」
「名前さンンン!?お通ちゃんに頼まれただけなんです!信じてください名前さァァん!!」

土方さんに羽交い締めにされながらも身の潔白を主張する新八くん。ごめんね、周りの目が痛いんだ、話しなら中で聞くからね。
真選組が所持する宣伝カーの後部座席へ三人を押し込み、ドアを閉めた。

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